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掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。
参照元:全国がんセンター協議会(全がん協加盟施設の生存率協同調査)/全がん協生存率
肝臓癌は、術後2年以内に約7割が再発するとされており、極めて再発率の高い癌です。特に注目すべき点は、再発の約90%が肝臓内での再発であるという点です。
このため、肝臓癌の治療では、初回手術で可能な限り癌細胞を除去し、再発時にも再切除や局所治療(ラジオ波焼灼術など)を適応する方針がとられます。
肝細胞癌は再発率が高く、切除術後2年以内に約70%で再発するといわれています。しかし、再発の約90%は残った肝臓内の再発であり、可能な限り再肝切除やラジオ波焼灼術などの治癒を狙った治療を目指します。
また、肝臓癌の多くは基礎疾患としてB型・C型慢性肝炎や肝硬変を有しており、再発のみならず合併症の管理も重要です。肝機能が低下していると、治療の選択肢やタイミングにも影響を与えます。
なお、肝臓は血流が非常に豊富な臓器であり、肺や骨、リンパ節、脳など他臓器への遠隔転移も起こり得るため、全身的な経過観察も欠かせません。
肝臓癌は、大きく分けて肝臓から発生する「原発性肝癌」と、他の臓器から転移して発生する「転移性肝癌」に分類されます。原発性肝癌のうち、約90%以上を占めるのが肝細胞癌(HCC:Hepatocellular Carcinoma)で、残りは胆管細胞癌(肝内胆管癌)や混合型腫瘍などです。
肝細胞癌の主な原因は、慢性ウイルス性肝炎(B型・C型)や肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)といった慢性肝疾患です。これらは長期的に肝臓へダメージを与え、がん化リスクを高めるとされています。
また、飲酒や糖尿病、肥満などの生活習慣病も発症リスクとして注目されており、ウイルスに起因しない「非ウイルス性肝癌」の割合も年々増加傾向にあります。
肝臓癌は初期にはほとんど自覚症状がないことが特徴で、定期的な画像検査や血液検査によって偶然発見されることも多くあります。
進行すると、全身の倦怠感、腹部膨満感、黄疸、浮腫、腹水、食欲低下、体重減少、肝性脳症、出血傾向などの症状が現れることがあります。これらは、がんそのものによる症状だけでなく、肝機能の低下や肝硬変の進行によって引き起こされる場合もあります。
肝臓癌に特有の症状としては、みぞおちから右上腹部にかけての鈍い痛みやしこり、腹部の圧迫感などが挙げられます。腫瘍が大きくなると、肝被膜を刺激して痛みを生じることもあります。
肝臓癌は、他の多くの癌と比較して再発率が非常に高いとされています。切除後5年以内の再発率はおよそ70~80%と報告されており、その理由のひとつは、肝癌の発生母地である慢性肝疾患(B型・C型肝炎や肝硬変)が治療後も残ることにあります。
慢性的な炎症により肝細胞の再生・破壊が繰り返される中で、新たな癌が多中心性に発生しやすくなります。これにより、「同じ部位からの再燃」だけでなく、「別の部位からの新規発生」による再発が起こるのが特徴です。
また、肝臓は血流が豊富で、門脈という大きな静脈を通じて腸管からの血液を集めているため、転移のリスクも高いとされています。血行性にがん細胞が運ばれやすいことも再発の要因のひとつです。
肝臓癌において、根治を目指せる最も効果的な治療法は外科手術による肝切除です。ただし、実際の治療方針は腫瘍のサイズや個数、脈管侵襲の有無、肝機能(Child-Pugh分類やALBIスコア)を総合的に評価して決定されます。
診療ガイドラインでは、肝機能が比較的保たれている場合には肝切除や局所治療(ラジオ波焼灼術など)が推奨されます。一方で、肝障害が進行していたり、腫瘍数が多い場合は肝動脈化学塞栓療法(TACE)や薬物療法、肝移植、緩和ケアなどが選択肢となります。
肝癌診療ガイドラインでは、肝障害度と腫瘍のサイズ・個数・脈管侵襲の有無に応じて、肝切除、局所療法、肝動脈塞栓術、薬物療法、肝移植、緩和ケアなどを選択することが提唱されています。個々の患者においては、腫瘍の悪性度や解剖学的位置なども考慮されます。
肝臓癌で最も根治的な治療法とされるのが外科治療です。ただし、外科手術は肝機能が保たれており、腫瘍の個数が限られ、脈管浸潤がない、あるいは限局していると判断された場合に適応されます。
外科治療は大きく「肝切除」と「肝移植」に分けられ、適応は腫瘍の広がりと肝機能をもとに判断されます。近年では腹腔鏡やロボット支援による低侵襲手術も普及しつつありますが、開腹での広範な切除が必要になるケースも少なくありません。
腫瘍が肝臓内に限局しており、個数が3個以下、かつ肝機能が比較的良好である場合に外科的切除が選択されます。腫瘍の大きさに明確な制限はなく、大型腫瘍であっても切除可能と判断されれば適応されます。
多くは、がんが肝臓にとどまっており、3個以下の場合に行います。がんの大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような巨大なものであっても、切除が可能な場合もあります。また、がんが門脈や静脈の血管、胆管へ広がっている場合でも、一部のがんでは肝切除を行うことがあります。
ただし、腹水や黄疸など肝機能の低下がみられる場合は、切除後に肝不全を引き起こすリスクが高くなるため、原則として他の治療が優先されます。
なお、近年では病変の部位や大きさによっては腹腔鏡やロボット支援下での肝切除も選択されており、術後の回復や創部の小ささといった点でメリットがありますが、適応は慎重に判断されます。
肝切除の対象となる肝臓癌の中でも、腫瘍のサイズや部位、肝機能の状態などを総合的に判断し、低侵襲な腹腔鏡手術が適応される症例に対して実施されます。保険適用の拡大により、現在では多くの施設で標準治療のひとつとして行われています。
開腹手術に比べて創部が小さく、術後の痛みや回復までの期間が短縮されるメリットがあります。また、癒着のリスクが少ないため、再手術の際にも有利に働くことがあります。
一方で、術中の触診ができないこと、出血時の対応が限られることなどが課題とされており、適応の可否は患者ごとの病状だけでなく、手術を行う医療施設の経験や体制も加味して判断されます。
転移性肝腫瘍、肝細胞癌、その他肝良性腫瘍が主な適応となります。5mmから12mmのポート創(穴)を5か所程度設置し、高解像度カメラスコープ、腹腔鏡用鉗子、エネルギーデバイスを挿入して肝離断を行います。
肝臓を完全に摘出し、ドナーから提供された健康な肝臓を移植する治療法です。日本では主に親族から肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」が行われています。
肝移植は、肝機能が著しく低下しており肝切除が困難な場合や、複数の病変があるものの一定の条件を満たす場合に適応されます。特に、肝細胞癌における肝移植の適応には「ミラノ基準」が広く用いられています。
肝細胞がんに対する肝移植は、(a)脈管侵襲や肝外転移がない、(b)がんが1個で5cm以下、または(c)3個以下で3cm以下という「ミラノ基準」を満たす場合に行われることがあります。
移植後は拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤を使用しますが、その影響により感染症や新たな腫瘍発生のリスクもあるため、術後は長期的な経過観察と薬物管理が必要です。
穿刺局所療法とは、開腹せずに体表から針を刺して癌を直接破壊する治療法です。体への負担が比較的少ない低侵襲治療であり、小さな病変に対して高い局所制御率が期待されます。
Child-Pugh分類がAまたはBで、腫瘍が3個以下かつ1個あたりのサイズが3cm以下の症例に対して、ラジオ波焼灼療法(RFA)が推奨されます。1個あたりのサイズが2cm以下の場合には、RFAと肝切除は同等の効果があるとされます。
ラジオ波焼灼療法(RFA)は、穿刺局所療法の中でも特に効果と安全性のバランスがよく、標準治療として広く用いられています。がん病変に特殊な針を刺し、電気で熱を発生させて癌細胞を焼灼・壊死させます。
治療中や直後には腹痛・発熱・軽度の出血などが生じることがありますが、多くは一時的なもので、適切に管理されます。
従来使用されていた経皮的エタノール注入療法(PEI)は、現在ではRFAの普及により選択される機会が減少しています。
穿刺局所療法の中でも特に推奨されている治療法です。特殊な針を癌細胞へ刺して、電気を流して癌細胞を焼きます。針を刺す時だけでなく、癌細胞を焼く際にも痛みが発生するため、治療時は複数の麻酔や鎮痛剤が併用されます。
従来は経皮的エタノール注入(PEI)や経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)といった穿刺局所療法が一般的でした。
塞栓療法とは、がん組織に栄養を供給している血管を塞ぐことで、腫瘍の壊死を促す治療法です。さらに、抗がん剤を同時に投与することで治療効果を高める「肝動脈化学塞栓療法(TACE)」が、現在の標準治療として広く用いられています。
Child-Pugh分類がAまたはBで、腫瘍が多発している場合(3cmを超える腫瘍が複数個または4個以上)にTACEが適応されます。がんの広がりに応じて複数回の施行が必要になることもあります。
TAE(肝動脈塞栓療法)は、抗がん剤を使わずに血管だけを塞ぐ方法で、抗がん剤による副作用が強く出る場合に検討されます。TACEとTAEはいずれもカテーテル治療であり、侵襲が少ない反面、治療後には発熱・痛み・肝機能の一時的な低下などがみられることがあります。
肝動脈へカテーテルを挿入し、抗がん剤と造影剤を注入した上で、血管を塞ぐための物質を挿入する治療です。癌への栄養を遮断しながら、さらに抗がん剤によって癌を攻撃する多段階の治療となっています。
肝動脈の一部を遮断して、肝臓の癌細胞へ栄養を送っている血流を阻害する治療です。TAEの場合、抗がん剤を用いず、塞栓物質のみが注入されます。
血管造影に用いるカテーテルを使って、抗がん剤のみを注入する治療法です。
肝臓癌の進行例では、分子標的薬による薬物療法が標準治療として行われます。これらはがん細胞の増殖や血管新生に関与する分子をピンポイントで阻害する薬剤です。
初回治療ではレンバチニブまたはアテゾリズマブ+ベバシズマブの併用療法が推奨されます。進行後の二次治療としてはソラフェニブ、レゴラフェニブ、カボザンチニブなどが適応されます。
これらの薬剤は、副作用として高血圧、手足症候群、出血、下痢、倦怠感などがみられることがあります。定期的な血液検査や画像診断を行いながら、効果と副作用のバランスを見て治療を継続・調整していきます。
分子標的治療に用いられる薬剤には複数の種類があり、どれを1次治療や2次治療に用いるかは、個々の患者の状態や主治医の判断によって決定される点が特徴です。また、分子標的薬ごとに副作用のリスクがあり、ごく軽度の副作用まで含めれば、治療を受ける大半の患者に副作用が発生することも無視できません。
1次治療では、分子標的薬であるソラフェニブまたはレンバチニブを用います。ソラフェニブによる治療後にがんが進行してしまった場合、副作用などの問題がなくChild-Pugh分類のAに当てはまるときは、同じく分子標的薬である、レゴラフェニブを2次治療として用いることがあります。なお、レンバチニブを1次治療とした場合の2次治療については、まだ検討がなされている段階です。
引用元:国立がん研究センター がん情報サービス|肝細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html)
肝臓癌に対する放射線治療は、標準治療としては確立していないものの、骨や脳などへの転移巣に対する疼痛緩和や局所制御を目的として使用されることがあります。
特に定位放射線治療(SBRT)や粒子線治療(陽子線・重粒子線)は、限られた施設で実施されており、がんの部位や大きさ、周囲臓器との位置関係によって適応が判断されます。
また、肝門部の腫瘍によって胆道閉塞や血管圧迫をきたしている場合にも、症状緩和を目的とした照射が検討されることがあります。
肝臓癌では開腹手術による治療を受けることが多く、術後に適切なリハビリテーションを行い、手術によるダメージから早急に回復することも重視されています。
へその部分より上をメスで切り開く手術では、術後に腹筋を利用した呼吸が難しくなりがちです。また、特に喫煙者は呼吸機能が低下することで痰を上手に吐き出せず、誤嚥性肺炎を発症するリスクがあります。
そのため、開腹手術の前から適切な呼吸トレーニングをし、術後にも安全な呼吸を行えるように指導されます。
手術後に寝たきりの状態になってしまうと、肝臓だけでなく全身の機能低下を引き起こし、合併症や再発リスクが上昇してしまうもの。そのため、術後はなるべく早い段階で離床し、さらには日常生活への早期復帰を目指してリハビリ指導が行われます。
肝臓癌の患者では、大半が慢性のB型・C型肝炎やアルコール性肝障害といった慢性肝疾患を抱えており、癌治療と並行してそれらの治療を行うことが重要です。
また、肝臓の状態は再発リスクへ直結するため、癌治療後も適切な治療によって健康管理を行うことが欠かせません。
肝細胞がんの患者さんの多くは、がんと慢性肝疾患という2つの病気を抱えているため、がんの病期(ステージ)だけでなく、肝臓の障害の程度(Child-Pugh分類による評価)も考慮して治療方法を選択します。
引用元:国立がん研究センター がん情報サービス|肝細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html)
日本国内において、肝臓癌の原因の大部分がB型・C型肝炎とされており、肝炎ウイルスへ感染している人は十分な治療を受けなければなりません。また、暴飲暴食による肝硬変やアルコール性肝障害も肝臓癌のリスクを上昇させるため、術後はアルコールを控え、肝機能の安定を目指すことが大切です。
加えて、近年では非アルコール性脂肪性肝炎を原因とする肝臓癌にも注目されています。
非アルコール性脂肪性肝炎はメタボリックシンドロームと関係があるとされており、普段にお酒を飲まない人でも、生活習慣の乱れによって体重や脂肪量が増加していれば注意しなければなりません。そのため、食習慣や運動習慣を見直して、ライフスタイルを改善することが、肝臓癌の再発予防に必要です。
肝臓がんのステージ分類には、日本肝臓研究会による「臨床・病理原発性肝癌取扱い規約」と、国際規約である「TNM悪性腫瘍の分類(UICC)」の2種類があります。
Ⅰ期 | (1)癌細胞は1つに限られ、(2)その大きさは2cm以下、(3)脈管(門脈、静脈、胆管)に広がっていない状態。 |
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Ⅱ期 | 上記(1)~(3)のうち2項目が当てはまる状態。 |
Ⅲ期 | 上記(1)~(3)のうち1項目が当てはまる状態。 |
Ⅳa期 | 上記(1)~(3)のいずれも当てはまらない状態、あるいは(1)~(3)に関係なくリンパ節に移転が見られる状態。 |
Ⅳb期 | 上記(1)~(3)やリンパ節への転移の有無に関係なく、遠隔転移が見られる状態。 |
Ⅰa期 | 直径2cm以下の癌が1つだけ認められる状態。 |
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Ⅰb期 | 血管侵襲(癌が血管内に入る混むこと)を伴わない、直径2cm以上の癌が1つだけ認められる状態。 |
Ⅱ期 | 血管侵襲を伴う直径2cm以上の癌が1つだけ認められる状態。あるいは直径5cm以下の癌が2つ以上認められる状態。 |
Ⅲa期 | 直径5cm以上の癌が2つ以上認められる状態。 |
Ⅲb期 | 門脈、肝静脈の大分岐、あるいは胆のう以外の隣接臓器にまで癌が達している状態。あるいは癌が臓側腹膜を貫通している状態。 |
Ⅳa期 | 癌の大きさや浸潤度に関係なく、領域リンパ節(肝臓付近のリンパ節)に転移が認められる状態。 |
Ⅳb期 | 肝臓の大きさや浸潤度、リンパ節への転移の有無に関係なく、他の臓器への遠隔転移が認められる場合。 |
前述の通り日本の臨床・病理原発性肝癌取扱い規約とUICCでは多少ステージの内容が異なる場合がありますが、いずれも同じ分類方法、「TNM分類」によって分類されています。つまり、「T=癌の大きさや個数、浸潤の度合い」、「N=リンパ節への転移の有無」、「M=遠隔転移の有無」の3要素を総合的に見て、癌がどの段階に達しているかを位置づけるのです。
癌が小さくて少なく、かつ治療に耐えられる肝予備機能がある場合には、ラジオ波を用いて腫瘍に熱を発生させ凝固させる「ラジオ波焼灼法」という選択肢があります。また、複数の癌がみられその大きさが3cm以上であったり脈管への広がりが見られる場合には、肝動脈に塞栓物質を注入して癌への栄養供給を阻害し、壊死させる「肝動脈塞栓療法」という治療法もあります。しかし癌細胞を全て切除し切れると判断される場合には、手術療法が一般的でしょう。術後は薬物療法で様子をみます。
手術では切除しきれないと判断された場合には、放射線療法や化学療法がとられます。癌の数が3個以内、大きさが3cm以内(単発なら5cm以内)であれば、肝移植という選択肢もあります。
癌により重度の肝障害に至っており肝移植でも回復が難しいと考えられる場合には、症状を抑える「緩和治療」が行われます。