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多発性骨髄腫

掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。

多発性骨髄腫の生存率

国立がん研究センターがん情報サービスの最新集計によると、2014年~2015年に多発性骨髄腫と診断された方の5年相対生存率は51.8%(男性52.3%、女性51.2%)です。10年相対生存率(2009年診断例)は29.0%と報告されています。

近年の新薬開発により治療成績は向上しており、生存率は改善傾向にあります。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計)、「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/ncr/monitoring.html

多発性骨髄腫は、病気の進行状態でステージが分類されており、現在、国際的に広く用いられているのは、2015年に提唱された改訂国際病期分類(Revised International Staging System: R-ISS)です。これは、従来の国際病期分類(ISS)で用いられた血清アルブミンと血清β2ミクログロブリンの値に、血清LDH(乳酸脱水素酵素)値および染色体異常のリスクを加味して、より正確に予後を予測するものです。

多発性骨髄腫はどのような癌か

血液細胞は骨の中の骨髄で造られます。多発性骨髄腫は、その骨髄の中にある「形質細胞」というリンパ球の一種が悪性化し、無秩序に増殖する血液のがんです。

形質細胞は本来、体内に侵入した細菌やウイルスなどを攻撃する「抗体(免疫グロブリン)」をつくる重要な役割を担っています。しかし、形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になると、正常な抗体をつくる能力が低下し、代わりに異常な抗体(単クローン性免疫グロブリン)である「M蛋白」を大量に産生するようになります。

M蛋白は特定の異物に対する攻撃能力を持たないため、免疫機能が低下します。M蛋白の量や種類を調べることは、多発性骨髄腫の診断、病気の進行度の評価、治療効果の判定に重要です。

多発性骨髄腫は血液のがんの1つですが、よく知られている白血病とは異なります。白血病は若年層にも発症し、急激に進行することがありますが、多発性骨髄腫は比較的ゆっくり進行し(くすぶり型と呼ばれる病態もあります)、発症年齢のピークは60代後半から70代と比較的高齢者に多く、男性の方が女性よりもやや多く発症します。統計によると、2019年の1年間で人口10万人あたり約6.4人が新たに発症しています。

参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(全国がん登録 罹患数・率)https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/ncr/ncr_incidence.html

多発性骨髄腫がなぜ起こるのか、明確な原因はまだわかっていませんが、加齢、放射線被曝、特定の化学物質への曝露、遺伝的要因などが関与している可能性が研究されています。しかし、近年の研究により、多発性骨髄腫に対する治療は目覚ましく発展している分野の1つです。適切な治療を行なうことで、症状を和らげたり、病気の進行を抑えて深い寛解(病気の活動性が非常に低い状態)を目指したりすることが可能になっており、予後も大きく改善しています。また、維持療法などにより再発を遅らせることも期待できます。医師と相談のうえ、適切な治療方法の検討と決定を行なってください。

多発性骨髄腫の症状は多彩です。代表的な症状はCRAB症状と呼ばれます。

その他にも、正常な抗体が減ることで抵抗力が低下し、肺炎や尿路感染などの感染症にかかりやすくなります。M蛋白が異常に増えると血液がドロドロになり(過粘稠度症候群)、頭痛、めまい、視力障害などを引き起こすこともあります。

このように、多発性骨髄腫はさまざまな症状が出てくる病気といえます。

多発性骨髄腫が再発しやすい理由・しにくい理由

多発性骨髄腫は、治療により症状が改善し寛解状態になっても、多くの場合、再発したり、病状が進行したりする可能性が高い疾患です。これは、現在の治療法では骨髄腫細胞を完全にゼロにすることが難しいためと考えられています。

多発性骨髄腫の治療には主に薬物療法が用いられますが、再発・難治化した患者さんには、初回治療で効果があった薬剤を再び用いる場合や、異なる作用機序を持つ薬剤を用いる場合があります。近年、使える薬剤の種類が(分子標的薬、免疫調節薬、抗体薬、CAR-T細胞療法など)大幅に増えており、治療選択肢が広がり、治療成績も改善されてきています。

多発性骨髄腫に用いられる治療法

多発性骨髄腫の治療に関しては、まず患者さんの年齢や全身状態、合併症の有無、病気の進行度(症候性か無症候性か)などから自家造血幹細胞移植の適応があるかどうかが検討され、それぞれの結果によって初期治療の治療方針が決定されます。

移植適応の一般的な条件としては「65歳以下(最近では70歳程度まで考慮されることもあります)」や「重篤な合併症なし」などがありますが、年齢だけでなく、身体機能や併存疾患の状態(フレイル評価など)を総合的に判断することが重要です。患者さん自身が移植を希望するかどうかという意思も同様に尊重されることがポイントです。

また、多発性骨髄腫には、CRAB症状などの臓器障害がある「症候性骨髄腫」と、臓器障害はないものの骨髄腫細胞やM蛋白が一定量存在する「無症候性(くすぶり型)骨髄腫」があります。基本的に治療が開始されるのは症候性骨髄腫ですが、くすぶり型の中でも特に進行リスクが高いと判断される場合(骨髄腫細胞割合60%以上、血清遊離軽鎖比100以上、MRIで2箇所以上の骨病変など)は、症候化する前に早期に治療を開始することが検討されます。

以下では多発性骨髄腫の治療に関して内容ごとに解説していきます。

初期治療

多発性骨髄腫と診断が下り、治療が必要と判断された時点で、まず骨髄腫の細胞を減少させる薬物療法(導入療法)が検討されます。また、患者が移植条件に適合する場合、導入療法後に大量化学療法と自家造血幹細胞移植が行われることが標準的です。

移植適応のある患者さんの場合

一般的に、比較的若年(おおむね65歳~70歳以下)で、重要な臓器の機能が保たれており、重篤な合併症なども存在していない場合、自家造血幹細胞移植(ASCT)が検討されます。

自家移植を実施する前に、導入療法として強力な薬物療法を行い、骨髄腫細胞をできるだけ減少させます(寛解導入)。現在の標準的な導入療法としては、VRd療法(ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン)や、それに抗CD38抗体薬であるダラツムマブを加えたD-VRd療法などが推奨されています。導入療法を行った後に検査を行い、治療効果が十分に得られていると判断されれば、改めて自家移植が可能かどうか検討される流れです。

治療効果の判定には、骨髄腫細胞が産生する「Mタンパク」や血清遊離軽鎖(FLC)を指標とします。治療開始前と比較して、血液中あるいは尿中のMタンパクなどが一定程度以上減少した場合など、国際的な基準に基づいて「奏効した」と判定されます。導入療法が奏効した場合は、末梢血から造血幹細胞採取という処置を行い、十分量の造血幹細胞を採取・凍結保存します。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 多発性骨髄腫 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/MM/treatment.html)

自家移植を実施する場合、移植の前処置として抗がん剤(メルファラン)を大量に投与(大量メルファラン療法:HD-MEL)することで高い抗腫瘍効果が期待できます。

なお、初期治療(導入療法)を経ても骨髄腫細胞の減少が思うように認められなかった場合、救援療法(サルベージ療法)を検討したり、移植以外の治療方針を再検討したりする必要があります。

自家造血幹細胞移植(ASCT)

造血幹細胞は血液細胞(赤血球、白血球、血小板)を作り出す元になる細胞です。

多発性骨髄腫患者における自家造血幹細胞移植は、まず大量の抗がん剤(メルファラン)を投与する「大量化学療法」によって、骨髄腫細胞を可能な限り減少させます。この大量化学療法は骨髄の正常な造血機能も破壊してしまうため、その後、あらかじめ採取・凍結保存しておいた患者自身の正常な造血幹細胞を患者の体内へ点滴で戻し(輸注)、患者の造血機能を回復させる治療法です。

造血幹細胞移植には、患者自身の細胞を利用する自家移植と、ドナーから採取した細胞を移植する同種移植がありますが、同種移植では拒絶反応(GVHDなど)のリスクが高く、治療関連死亡率も高いため、一般的に多発性骨髄腫の治療では自家造血幹細胞移植が標準的に行われます(同種移植は特殊な状況下でのみ検討)。

自家造血幹細胞移植により、より深い寛解が得られ、無増悪生存期間や全生存期間の延長が期待されます。導入療法で十分な効果を得た後、早期に自家造血幹細胞移植を行うことが勧められています。移植の前処置として、通常大量メルファラン(多くは200mg/m²)の投与を行い、その1~2日後に凍結しておいた自家造血幹細胞を急速解凍して静脈から体内に注入します。

維持療法

自家造血幹細胞移植を行った後、寛解状態をできるだけ長く維持し、再発を遅らせるために「維持療法」が行われることが標準となっています。

現在、エビデンスがあり推奨されているのは免疫調節薬であるレナリドミドによる維持療法です。レナリドミド維持療法により、無増悪生存期間および全生存期間の延長効果が示されています。ただし、長期投与による副作用(骨髄抑制、感染症、末梢神経障害など)や二次がん(他のがんが発生するリスク)の可能性も指摘されており、実際の治療に際してはメリットとデメリットに関する説明を十分に受け、定期的なモニタリングを行いながら継続することが望まれます。プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブやイキサゾミブによる維持療法も選択肢となる場合があります。

移植を行わない(移植非適応)患者さんの場合

一般的におおむね66歳以上の多発性骨髄腫患者さんや、65歳以下でも併存疾患などにより移植条件に適合しない状態、また本人が移植を希望しないといった場合において、複数の薬剤を組み合わせた薬物療法が初期治療として選択されます。

現在の標準的な治療レジメンとしては、Rd療法(レナリドミド+デキサメタゾン)、それに抗CD38抗体薬を加えたD-Rd療法(ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン)、あるいはVRd-Lite療法(ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾンの減量療法)、MPB療法(メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ)などが挙げられます。患者さんの年齢や全身状態、併存疾患(腎機能、心機能、末梢神経障害のリスクなど)を考慮して、最適な治療法が選択されます。

再発・難治性骨髄腫への治療

再発した多発性骨髄腫や、初期治療によって効果が不十分であったり、効果がなくなった難治性骨髄腫の場合、現在では多くの薬剤が開発・承認されており、様々な選択肢があります。

どのような薬剤・治療法を選択するかは、初回治療の内容、初回治療の効果持続期間(再発までの期間)、患者さんの状態(年齢、合併症、臓器機能など)、骨髄腫細胞の遺伝子異常、そして患者さんの希望などを総合的に考慮して決定されます。

再発・難治性骨髄腫に用いられる主な薬剤・治療法には以下のようなものがあります。
プロテアソーム阻害薬…ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ
免疫調節薬(IMiDs)…レナリドミド、ポマリドミド
抗CD38モノクローナル抗体薬…ダラツムマブ、イサツキシマブ
抗SLAMF7モノクローナル抗体薬…エロツズマブ
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬…パノビノスタット
核外輸送タンパク質(XPO1)阻害薬…セリネキサー
BCMA(B細胞成熟抗原)を標的とした治療
CAR-T細胞療法(イデカブタゲン ビクルユーセル、シルタカブタゲン オートルユーセル)
二重特異性抗体(テクリスタマブ、エルラナタマブなど)
抗体薬物複合体(ADC)(ベランタマブ マホドチン - 現在供給停止中、再開未定)

これらの薬剤は、多くの場合デキサメタゾンなどのステロイドと併用されたり、複数の薬剤を組み合わせた多剤併用療法として用いられます。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 多発性骨髄腫 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/MM/treatment.html)

初回治療終了から期間が空いての再発

初回の治療で良好な効果が得られ、その効果が長期間(例えば1年以上)持続した後に再発した場合、再度同じ治療法(または類似の薬剤)が有効である可能性があります。そのため、患者の状態を観察しながら初期治療で使用した薬剤を含むレジメンを再び行うか、あるいは初期治療では採用しなかった新しい作用機序の薬剤を使用するかといったことが検討されます。

なお、初回に自家造血幹細胞移植を行った患者さんが再発した場合、2回目の自家移植を行うかどうかについては、前回の移植からの期間や効果持続期間などを考慮して慎重に判断されます。

いずれにしても初回治療で得られた効果や使用した薬剤などの条件が重要になるため、前回の治療内容をきちんと踏まえた上で検査や診察を行うことが大切です。

初回治療終了から早期の再発・再燃

初回治療の効果が不十分であったり、効果が持続せず短期間(例えば半年~1年以内)で多発性骨髄腫が再発・再燃した場合、あるいは治療中に進行した場合は、難治性骨髄腫としての対応が必要となります。また、予後不良とされる染色体異常が認められるような場合も、より強力な治療や新しい作用機序の薬剤が必要となることがあります。
このような難治性骨髄腫に対しては、上記で挙げたような新しい薬剤(プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗体薬、BCMA標的療法など)を含む救援療法(サルベージ療法)が検討されます。

具体的な治療プランは初回治療の内容や、現時点での患者の状態などを多角的に考慮して策定されます。救援化学療法が奏効し、HLA(ヒト白血球抗原)の適合するドナーが見つかっている若年で全身状態の良い患者さんの場合、同種造血幹細胞移植という選択肢も理論的にはありますが、治療関連リスクが高く、その有効性も確立されていないため、一般的には臨床試験などの枠組みで行われることが望ましいとされています。

薬物療法

多発性骨髄腫の患者さんに対しては、骨髄腫細胞を殺傷し、患者さんの状態を良くしたり、病気の進行を抑えたりする目的で薬物療法が治療の中心となります。

ただし、薬物療法では治療効果だけでなく副作用についても十分に検討しなければならず、常にメリットやデメリット、効果とリスクのバランスを考えながら使用する薬剤や治療レジメンを選択することが不可欠です。

多発性骨髄腫の薬物療法は大きく以下のように分類されます。

モノクローナル抗体薬

BCMA標的療法

以下に、いくつかの代表的な薬剤について補足します。(2025年5月時点)

ボルテゾミブ(ベルケイド): 骨髄腫細胞内で不要なタンパク質を分解するプロテアソームという酵素の働きを阻害し、細胞死を誘導する薬剤です。多発性骨髄腫の初期治療から再発・難治性の治療まで幅広く利用されます。注射薬(皮下注または静脈注)です。 注意すべき副作用として、末梢神経障害(しびれ、痛み)、骨髄抑制(白血球・血小板減少、貧血)、肺障害、消化器症状(便秘、下痢)などがあります。末梢神経障害に対しては投与方法の変更(皮下注へ)や減量・休薬で対応します。定期的な血液検査や症状の確認が重要です。

レナリドミド(レブラミド): 免疫系に作用し、骨髄腫細胞の増殖を抑えたり、免疫細胞を活性化させたりする免疫調節薬です。内服薬で、初期治療から維持療法、再発治療まで広く用いられます。 サリドマイドと同様の骨格を持つため、催奇形性のリスクがあり、厳格な安全管理手順(RevMateなど)の遵守が必要です。妊娠可能な女性はもちろん、男性も服用中は避妊が必要です。 その他の主な副作用として、骨髄抑制、深部静脈血栓症・肺塞栓症(特にデキサメタゾン併用時や高リスク患者で注意が必要で、予防薬が投与されることがあります)、疲労感、発疹などがあります。

サリドマイド(サレド): 最初に開発された免疫調節薬です。かつては広く用いられましたが、レナリドミドなどより有効性の高い薬剤が登場したことや、末梢神経障害、眠気などの副作用が強いため、現在では使用される場面は限定的になっています。催奇形性リスクのため、レナリドミド同様、厳格な安全管理手順(TERMS)が必要です。

ダラツムマブ(ダラキューロ、ダラザレックス): 骨髄腫細胞の表面に多く発現しているCD38というタンパク質に結合するモノクローナル抗体薬です。骨髄腫細胞を直接攻撃したり、免疫細胞による攻撃を助けたりします。注射薬(皮下注または静脈注)で、初期治療から再発治療まで他の薬剤と組み合わせて広く用いられます。 主な副作用として、点滴・注射に伴う反応(Infusion/Injection Reaction: IRR、特に初回投与時)、骨髄抑制、感染症などがあります。

カルフィルゾミブ(カイプロリス): ボルテゾミブと同じプロテアソーム阻害薬ですが、より強力で不可逆的な阻害作用を持ちます。主に再発・難治例に用いられます。注射薬(静脈注)です。 注意すべき副作用として、心血管系の副作用(心不全、高血圧など)、腎障害、骨髄抑制、肺高血圧症などがあります。投与中は心機能や腎機能、血圧などのモニタリングが重要です。

ポマリドミド(ポマリスト): レナリドミド抵抗性の再発・難治例に用いられる、より強力な免疫調節薬です。内服薬です。 レナリドミド同様、催奇形性リスクのため厳格な安全管理手順(PomMate)が必要です。副作用もレナリドミドと類似しており、骨髄抑制、血栓塞栓症、感染症などに注意が必要です。

CAR-T細胞療法(イデセル、シルタセル): 患者自身の免疫細胞(T細胞)を取り出し、遺伝子改変技術を用いて骨髄腫細胞表面のBCMAを認識するように加工し、体内に戻す治療法です。再発・難治性の患者さんに対する高い治療効果が示されています。 サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性(ICANS)といった特有の重篤な副作用のリスクがあり、実施可能な施設が限定され、厳格な管理下で行われます。

二重特異性抗体(テクリスタマブなど): BCMAと免疫細胞(T細胞)の両方に結合し、T細胞を骨髄腫細胞に引き寄せて攻撃させる新しいタイプの抗体薬です。再発・難治例に用いられます。 CAR-T療法と同様にCRSや神経毒性のリスクがありますが、比較的管理しやすいとされています。感染症にも注意が必要です。

放射線治療

多発性骨髄腫の治療において、放射線治療は全身的な治療ではなく、局所的な問題に対処するために用いられます。

疼痛緩和目的

骨病変(特に脊椎など)によって強い疼痛が発生している場合、放射線治療によって痛みを効果的に緩和できることがあります。比較的少ない照射回数で効果が得られます。

腫瘤の消失・縮小を目的

骨髄腫細胞が骨外に大きな腫瘤(形質細胞腫)を形成した場合、放射線治療によって消失や縮小を目指すこともあります。この場合、疼痛緩和目的よりも放射線の総照射量は多くなることが一般的です。

脊髄圧迫への緊急対応: 骨髄腫が脊椎に進展し、脊髄を圧迫して麻痺などの運動障害や感覚障害が生じている場合(脊髄圧迫)は、緊急性の高い状態です。放射線治療(緊急照射)に加えて、MRIによる迅速な診断やステロイド剤の大量投与などを併用して、神経症状の悪化を防ぐために可能な限り迅速に対処することが必要です。

合併症治療とQOL(支持療法と緩和ケア)

多発性骨髄腫では骨病変、腎障害、貧血、感染症、高カルシウム血症など様々な合併症が起こりやすく、これらが生活の質(QOL)を大きく損なう原因となります。そのため、骨髄腫に対する治療と並行して、これらの合併症に対する治療や予防(支持療法)を進めることが非常に重要です。

骨病変に対して:ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸など)や抗RANKL抗体薬(デノスマブ)の投与により、骨破壊を抑制し、骨痛の軽減や骨折の予防を目指します。

腎障害に対して:原因となるM蛋白を減らす治療に加え、十分な水分補給、腎毒性のある薬剤の回避などを行います。重度の場合は透析が必要になることもあります。
貧血に対して:赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の投与や輸血を行います。
感染症に対して:抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬による予防や早期治療、免疫グロブリン補充療法などが行われます。
疼痛に対して:放射線治療のほか、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、オピオイドなど)を用います。
また、病気の進行や治療に伴う痛み、倦怠感、食欲不振、精神的な苦痛などに対しては、早期から緩和ケアを導入し、患者さんの生活の質(QOL)を守るためのケアを優先することも重要です。

多発性骨髄腫を再発させないための予防法

現在のところ、多発性骨髄腫の再発を完全に予防する方法は確立されていません。しかしながら、治療後の寛解状態をできるだけ長く維持するために「維持療法」が行われることがあります。また、再発を早期に発見し、迅速に対応することが重要です。

多発性骨髄腫の進行は比較的他の一部のがんと比較して遅い場合もありますが、個人差が大きいです。自覚症状が出るよりも先に検査値の変化などで医師から再発の兆候を指摘されることも多いため、治療終了後も定期的な通院と検査(血液検査、尿検査、画像検査など)が必要不可欠です。

寛解状態や安定した状態にある方も、油断せず、感染症予防(手洗い、うがい、ワクチン接種など)を徹底しましょう。

適度な運動は、筋力維持や骨の健康維持に役立ちます。ただし、骨病変がある場合は、骨折のリスクがあるため、主治医や理学療法士と相談の上、適切な運動を行うことが重要です。

腎臓に負担をかけ過ぎないように、こまめな水分補給も心がけましょう。
これらは直接的な再発予防ではありませんが、良好な全身状態を保ち、QOLを維持するために大切です。

多発性骨髄腫のステージ(再掲・整理)

標準的に用いられる改訂国際病期分類(R-ISS)は以下の通りです。

ステージ分類

Ⅰ期 血清β2-ミクログロブリン値 < 3.5mg/L かつ 血清アルブミン値 ≥ 3.5g/dL であり、かつ高リスク染色体異常がなく、かつ血清LDH値が正常範囲内
Ⅱ期 Ⅰ期にもⅢ期にも該当しない状態
Ⅲ期 血清β2-ミクログロブリン値 ≥ 5.5mg/L であり、かつ高リスク染色体異常があるか、または血清LDH値が高い(正常上限を超える)

ステージの分類方法

多発性骨髄腫のステージ分類には、予後予測を目的として、血清のアルブミン値とβ2ミクログロブリン値に基づく国際病期分類(ISS)に、「高リスク染色体異常の有無」と「血清LDH濃度」の二つの基準を追加した改訂国際病期分類(R-ISS)が用いられています。

血清とは: 血液が固まる際に分離した上澄みの液体成分。

アルブミンとは: 血液中に最も多く含まれるタンパク質。栄養状態や肝機能の指標となる。低値は予後不良因子。

β2-ミクログロブリンとは: 全ての細胞表面にあるタンパク質。骨髄腫細胞量や腎機能を反映し、高値は予後不良因子。

高リスク染色体異常とは: 骨髄腫細胞に見られる特定の染色体異常(例: del(17p), t(4;14), t(14;16)など)で、病気の進行が速い、薬が効きにくいなど、治療に対して不利な影響を及ぼすもの。

血清LDH濃度とは: 体内の多くの細胞に含まれる酵素。骨髄腫細胞の増殖活性などを反映し、高値は予後不良因子。

ステージごとの治療方針(概要)

無症候性(くすぶり型)骨髄腫: 臓器障害(CRAB症状)がない場合は、基本的に経過観察となります。ただし、進行リスクが高いと判断される場合(骨髄腫細胞割合60%以上、血清遊離軽鎖比100以上、MRIで骨病変2箇所以上など)は、症候化する前に早期に治療を開始することが検討されます。

症候性骨髄腫(ステージⅠ、Ⅱ、Ⅲ): 診断されたら速やかに治療を開始します。治療の基本は薬物療法です。
移植適応のある患者さん: VRd療法やD-VRd療法などの導入療法を行い、その後大量メルファラン療法と自家造血幹細胞移植、さらにレナリドミドなどによる維持療法を行うのが標準的です。

移植非適応の患者さん: D-Rd療法、Rd療法、VRd-Lite療法などの薬物療法を行います。治療は継続的に行われることが多いです。 いずれの場合も、病状や治療効果に応じて治療法を変更・調整していきます。 また、骨病変や腎不全といった合併症(CRAB症状)が見られる場合は、骨髄腫に対する治療と並行して、これらの合併症に対する支持療法(ビスホスホネート製剤、デノスマブ、腎機能保護、感染対策など)を早期から行うことが極めて重要です。腫瘍による痛みや脊髄圧迫に対しては、放射線治療が行われることもあります。