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掲載している治療法はすべて保険適用外の自由診療のため、全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。
癌の再発に際して、免疫療法はどのような癌でも適応できる治療方法です。手術・抗がん剤・放射線治療が癌の3大治療法といわれますが、それに次ぐ治療法として近年注目されています。
人間の身体には、体内にあるウイルスや細菌といった異物を識別し、体外に排除しようとする免疫機能が備わっています。癌細胞も本来の自分の細胞ではない点で異物の1つです。そこで、免疫機能を増強することで癌細胞を排除させるのがこの治療方法です。
癌細胞を直接攻撃する免疫担当細胞は主にCTL(細胞障害性T細胞)、マクロファージ、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)が挙げられます。これらの細胞のいずれかを活性化させて、癌の増殖や発育を阻止するのです。
細胞の中には遺伝の情報としてDNAが存在しています。細胞は分裂する過程でなんらかの異常を起こしますが、適宜修復される、または自ら死滅(アポトーシス)することで正常な状態を保ちます。
しかし、稀に正しく修復されず正常ではない細胞になった状態で増殖してしまいます。無秩序に増殖してコントロールを失った細胞が、癌なのです。健康な人で1日に3000個ほどの癌細胞を作り出しているといわれますが、免疫機能が癌を撃退しているため、通常は癌化まで発展しません。しかし癌細胞の中には悪質なものもあり、正常な細胞を装ったまま癌化する、もしくは癌を攻撃する細胞の働きを弱めるタンパク質を分泌して増殖し、やがて癌になります。
そのため、癌を増殖させないために、免疫システムを正常化するのが非常に大切なことなのです。
免疫療法は免疫細胞に対して癌細胞だけを攻撃するようにするため、正常な細胞には影響がありません。そのため副作用も少なく、どんな患者さんにも対応できます。再発や転移癌の場合でも、体力が低下している場合でも適応となるのは、そのためです。
開発段階の治療のため、医学的な根拠を示すデータが少なく、治療実績が十分ではないことでしょう。徐々に研究や実績が増えてきてはいますが、まだ発展途上の治療方法なので科学的に有効と証明されていない免疫療法も多数あります。
効果が認められていないものは保険診療として認められていないため、患者が全額負担する自由診療で治療をしている医療施設が中心です。免疫療法は治験や先進医療での検討が進められており、今後の発展が期待されるものです。そのため薬物療法、放射線治療などと併用されることが多くあります。
癌の免疫療法は、主に次のように分けられます。
免疫細胞を活性化させる物質を投与することで、免疫細胞を活性化し、癌細胞を攻撃する方法です。
能動免役療法はこれまでに4つの治療法が開発されています。このうち、臨床試験を経て医薬品として承認されたものは「サイトカイン療法」と、一部の非特異的免疫賦活薬です。
サイトカインとは、細胞で作られる免疫や炎症に関係するタンパク質の総称です。
免疫細胞を集めたり、異物を攻撃したりするサイトカインを合成し体内に入れる方法です。インターフェロン、インターロイキンなどが使われています。
免役を賦活すると考えられる物質(微生物やキノコの抽出物)を体内に入れる方法です。
免疫が癌細胞を異物として認識する目印である癌細胞のタンパク質(癌抗原)をワクチンとして少量体内に入れ、それによってT細胞の活性化を促す方法です。
癌抗原の情報をT細胞に伝える樹上細胞を体外に取り出し、癌抗原を覚えさせた後、体内に戻す方法です。
免疫チェックポイント阻害療法とは、癌細胞によって体内の免疫機能が狂わされることを防止し、免疫システムを正常に維持するための治療法です。
なお、2020年7月時点で国内で承認されている免疫チェックポイント阻害剤としては「ニボルマブ(商品名:オプジーボ)」や「イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)」があります。
例えば花粉症や食物アレルギーのような症状は、体内の免疫細胞が過剰に活性化して、正常な細胞を攻撃することで生じます。そこで、人間の体内にはそもそも、免疫細胞が過剰に活性化されることを防ぐための機能が備わっており、体内の免疫システムの働きを調整しているということがポイントです。
また、免疫システムが正常に働いているからこそ、癌細胞が発生しても適切に処理して、癌の増殖を防止することが期待できます。
しかし、癌細胞には免疫系を調整する細胞の機能を悪用し、免疫細胞に対して偽の信号を発することで、免疫系を過剰に抑制しようとする仕組みがあり、この働きを癌細胞による「免疫逃避」と呼びます。
癌細胞の免疫逃避をそのまま放置すれば、いつまでも免疫システムが正常化されず、癌の増殖を止めることもできません。
そこで、免疫チェックポイント阻害剤は、癌細胞が免疫系に対して発している誤った信号の伝達を阻害して、体内の免疫システムを正常なまま維持することで、結果的に癌細胞を減らしていくという働きを持ちます。
つまり、免疫チェックポイント阻害療法は、それ自体が癌細胞を攻撃するのでなく、体内の正常な免疫細胞がしっかりと働けるようにサポートする治療法といえるでしょう。
免疫チェックポイント阻害療法として使用される薬剤は世界中で研究されており、日本では2014年7月に「ニボルマブ(商品名:オプジーボ)」が、メラノーマに対する治療薬として承認され、さらにはその1年後に「イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)」も承認されました。
また、その後もニボルマブについて他の癌への適用が追加承認されるなど、免疫チェックポイント阻害療法は現在進行形で発展を続けている治療法です。
癌細胞の免疫逃避は、様々な種類の癌で存在すると考えられており、免疫チェックポイント阻害剤の研究開発と実用化が進むことで、今後さらに癌治療が進化すると期待されています。
B細胞が作って異物を攻撃する抗体を人工的に作成して体内に入れる方法です。癌の薬物療法で使われる分子標的薬の一部は抗体療法です。
免疫療法は癌の程度や種類、他の治療などにも影響をほとんど受けないため、併用して行われることが多いです。しかしまだ発展途上の治療法なので経過を診ながら医師と検討していく必要があります。
免疫療法はまだその効果が確立されているない部分も多く、やはり癌の基本治療をベースにおく必要があります。近年優れた機器も開発され、癌の第一選択肢として標準治療の柱となっているのが放射線治療です。放射線には細胞の遺伝子に直接作用して細胞が分裂する能力をなくしたり、細胞自ら死んでいく現象(アポトーシス)を増強させて細胞を破壊させたりする力があります。放射線治療と手術は、局所にある癌細胞を集中的に治療するという点で共通の利点があります。しかし手術の場合、癌細胞を取り除く際に周辺の正常組織も一緒に取り除かなければなりません。放射線治療の場合、照射を受けることで正常細胞も影響を受けますが、正常細胞は回復力があるため臓器の機能不全を引き起こすことは極めて少なく、その機能を維持できます。
ただし、放射線治療は少なからず副作用が生じます。その症状は、吐き気・食欲不振・下痢・腹痛・だるさ・脱毛・皮膚炎など。照射した部位や個人の体質などで差はありますが、治療中や直後など比較的早期に副作用が生じる場合と、半年から数年後に副作用が生じる場合があります。外科手術とどちらが患者さん自身の治療に適しているかは、医師との相談が必要となります。