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当ページでは、精巣癌の概要と再発について解説しています。
精巣癌とは、男性のいわゆる「睾丸」に発症する癌のこと。全年齢を対象にすれば非常にまれな癌ですが、20~40代の男性に限った場合、決して珍しい癌ではありません。
原発であれ再発であれ、早期発見・早期治療により完治する可能性の高い癌です。入浴時などに異常を自覚した場合には、恥ずかしがらず早期受診を心がけましょう。
精巣癌とは、いわゆる「睾丸」に発症する癌のこと。精巣とは、男性ホルモンと精子を生産している卵型の臓器で、通常、陰嚢という袋の中で左右に1個ずつ存在します。
発症の初期段階における自覚症状は、ほとんどありません。下腹部の重圧感や鈍痛、急性の精巣痛などを自覚する患者もいますが、その多くは無痛性のしこりや精巣の腫れにより腫瘍が発見されます。
精巣癌の直接的な原因は不明です。ただし、傾向として次のような人は精巣がんになりやすいとされています。
なお、日本泌尿器科学会では、精巣癌の病期を次のようなステージに分類しています。
Ⅱ期は転移巣の大きさにより2段階、Ⅲ期は転移先や転移巣の大きさにより6段階に分類されています。
ステージⅠの場合(転移がない場合)、治療せず経過観察のみでも約80%の症例において再発しません。仮に再発しても、早期発見・早期治療により、2~3か月ほどの治療(抗がん剤や手術)により、ほぼ完治が可能です。
ただし、再発の発見に遅れた場合には転移する恐れもあることから、少なくとも発症から2年は頻繁な検査が必要となります。
なお、精巣癌の直接的な再発原因は不明ですが、精巣癌に限らず大半の癌は免疫力の低下や不健康な生活習慣、術後の残存癌などを要因として再発することがあります。また、喫煙や過度の飲酒、ウイルス感染(HPVなど)なども、一般的には癌再発のリスク要因とされています。
これら要因のうち、術後の残存癌以外については、患者自身の努力や心構えで克服できる可能性のあるものばかりです。再発リスクを抑えるため、医師の指示にしたがった健康的な日常を維持することが大切です。
精巣癌の再発の兆候として、疲労の感じやすさや下腹部の鈍痛などを自覚することもありますが、多くの場合、再発の兆候を自分で知るきっかけはありません。
発症から2年間は再発リスクが高いとされているため、再発しても早期治療で対処できるよう、定期的かつ頻繁に検査を受けることが望まれます。
なお、原発か再発かを問わず、精巣癌を生じた場合、病巣のあるほうが大きくなったりしこりを生じたりすることがあります。再発リスクのある間は、入浴時などに自身の精巣を確認し、気になる点があれば速やかに医師へ相談するようにしましょう。
精巣癌に限らず、全ての癌に共通する再発予防のための生活習慣があります。以下のポイントをよく理解し、可能な限り精巣癌の再発予防を図りましょう。
喫煙や過度の飲酒は、多くの癌の発症・再発に関与していることが分かっています。精巣癌の再発を予防するため、禁煙や禁酒(または節酒)は必須と心得たほうが良いでしょう。
自らの意志で禁煙や禁酒ができない場合には、医療機関の禁煙外来やアルコール外来に相談してみましょう。
肥満もやせ過ぎも、癌の発症率を高めると言われています。過食や極端なダイエットなどを避け、適正体重の維持を心がけましょう。1つの目安として、BMIを基準にした適正体重の維持を目指してみてください。
なお、食生活においては積極的に野菜を食べること、塩分を減らしたメニューを意識することなども、癌の再発予防に良いとされています。
身体活動量の多い人ほど癌のリスクが低い、という報告があります。極端に身体へ負荷を与える必要はありませんが、精巣癌の再発予防のため、常識的に「適度」と考えられる程度の身体活動は維持し続けたほうが良いでしょう。
もとより、適度な身体活動は心疾患リスクも低減させます。癌を含めた全身の健康維持のため、日々適切に体を動かすことは大切です。
精巣癌は、再発を早期発見できれば完治する可能性の高いと考えられています。上記の生活習慣をキープするとともに、医師の指示にしたがって必ず定期的な検査を受診するようにしましょう。
精巣癌は進行が早いため、精巣癌が疑われる場合には、まず精巣の摘出手術が行われます。その後、摘出した精巣の病理検査を行い、精巣癌であるか否か、また精巣癌であった場合には「セミノーマ型」か「非セミノーマ型」かを確定させ、それぞれの型に応じた治療を行うこととなります。
たとえばセミノーマ型でステージⅠの場合、特別な治療を行わなくても約80%の患者は再発しません。仮に再発しても、化学療法によりほぼ完治に導くことが可能です。非セミノーマ型であっても、ステージⅠであれば化学療法により大半が治癒します。
ステージⅡ以上の場合にも、セミノーマ型であれ非セミノーマ型であれ化学療法を主体に治療を進めます。なお、非セミノーマ型はステージに関わらず放射線治療の効果がほとんど認められないため、常に化学療法が第一選択となります。
精巣癌が再発しても、多くの場合は完治を目指すことが可能です。ただし、再発の発見が遅れて遠隔転移が認められた場合には、たとえ完治を目指すことが可能な状態だったとしても、患者の精神的な負担は大きいものとなるでしょう。改めて治療を進めるとともに、少しでも患者本人の精神的な安定を図るため、生活の質(QOL)の維持も検討したほうが良いでしょう。
生活の質(QOL)の維持を図る主な方法としては、専門家のカウンセリングの受診や支援グループへの相談、各種のサークル活動など。気分転換として、家族で旅行に出かけることも生活の質(QOL)を維持するための有効な方法です。
患者の性格や日頃のライフスタイル等も考慮しながら、周囲は本人に寄り添ったサポートを行いましょう。
精巣癌の罹患者は、日本人男性10万人あたり1~2人ほど。泌尿器科の専門医ですら、年間に数例しか経験しないほど非常にまれな癌とされています。
一方で精巣腫瘍は、20~40代の男性のおいては最も発症率の高い腫瘍です。働き盛りの若い男性の間において、精巣癌は決して珍しい疾患ではないことも理解しておきましょう。
精巣癌の初期段階において自覚症状はほとんどありませんが、片方の精巣が大きくなっていたり、硬いしこりが確認されたりした場合には、恥ずかしがらず泌尿器科を受診することが大切。受診の結果、仮に精巣癌の疑いが発覚したとしても、早期に治療を受けることで完治する可能性が高まります。
また、仮に再発したとしても、精巣癌の再発は早期治療により高い確率で完治します。
極度に恐れず、発症の懸念がある方(家族歴のある方など)は、定期的な検診を受けながら予防に努めることが大切です。