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掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。
参照元:がん情報サービス/悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は全身に転移しやすい傾向があります。リンパ系組織は全身を巡っており、リンパ管や血流を介してがん化したリンパ球がさまざまな部位に広がる性質を持つためです。
実際に転移がみられる臓器としては、骨髄・肝臓・脾臓・消化管・肺・中枢神経(脳や脊髄)などが挙げられます。特に高悪性度のリンパ腫では進行が速く、早期発見と適切な治療開始が重要とされます。
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球が異常に増殖し、リンパ節や全身のリンパ組織に腫瘤を形成する血液がんです。リンパ節以外にも皮膚、胃腸、肺、骨髄、脳など様々な部位に発生する可能性があります。
病理組織学的には「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大別され、日本人の約90%以上は非ホジキンリンパ腫に分類されます。さらに細かくは、B細胞系、T/NK細胞系に分けられ、進行スピードや治療法も異なります。
悪性リンパ腫の初期症状は、首、わきの下、鼠径部などの無痛性のリンパ節の腫れ(しこり)が代表的です。痛みを伴わないため、気づかず進行している場合もあります。
また、次のような全身症状(いわゆる「B症状」)がみられることもあります。
そのほか、倦怠感、かゆみ、食欲低下、貧血、咳、腹痛、下痢などの症状が現れることもあります。これらの症状が続く場合には、早期の医療機関受診が推奨されます。
悪性リンパ腫には30種類を超える病型があり、サブタイプごとに再発リスクが異なります。一般に低悪性度リンパ腫は進行が緩やかですが再発しやすく、高悪性度リンパ腫は再発時の進行が速い傾向にあります。
再発の際は、初発時と同じ病型であるとは限らず、形質転換と呼ばれる悪性度の高い病型への変化が生じる場合もあります。そのため、再発時には必ず再度の生検を行い、病理型や遺伝子異常の有無を再評価する必要があります。
年齢・全身状態・治療歴に応じて、化学療法の再導入、造血幹細胞移植、分子標的薬・免疫療法などから適切な治療法が検討されます。
悪性リンパ腫の治療では、病型やステージに応じて化学療法、放射線治療、分子標的薬、造血幹細胞移植などが選択されます。なかでも低悪性度のリンパ腫では再発の頻度が高く、長期にわたり経過観察と追加治療が必要になることが一般的です。
高悪性度リンパ腫では、初回治療で完全寛解を目指すことが重要です。再発率を下げるためには、治療の中断や中途半端な継続を避け、医師と相談のうえで計画通りに治療を完了させることが鍵です。
また、再発リスクが高いと予測される患者では、初回治療後の地固めとして自家造血幹細胞移植が考慮されることもあります。造血幹細胞移植は、免疫再構築とともにGVL効果(移植片対リンパ腫効果)を期待できる手段です。
悪性リンパ腫の主要な治療は薬物療法です。がん化したリンパ球を減少させるため、化学療法、分子標的療法、免疫療法が病型に応じて組み合わせて使用されます。
治療法はリンパ腫の種類(ホジキン・非ホジキン)、細胞型(B細胞・T細胞)、進行度、年齢、PS(全身状態)などによって異なり、専門医による病型分類が非常に重要です。
治療後は、PET-CTや骨髄検査、腫瘍マーカーなどを用いた厳密なフォローアップにより、再発や治療効果の確認を行います。
悪性リンパ腫に対する化学療法は、病型ごとに複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法(レジメン)が標準治療です。
代表的な治療法には、B細胞性リンパ腫に対する「R-CHOP療法(リツキシマブ+CHOP)」があります。CHOPは以下の薬剤の頭文字をとったものです。
通常、3〜4週間ごとに1コースを投与し、6〜8コース程度を繰り返します。治療は外来または入院で実施されます。
抗がん剤の副作用には、骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板の減少)、吐き気、脱毛、口内炎、倦怠感、感染症リスクの増加などがあります。これらは一時的なものが多く、適切な支持療法によって軽減可能です。
治療中は、定期的な血液検査や身体の状態の観察を行いながら、安全に治療を進めることが重要です。
分子標的療法では、がん細胞が持つ特定の抗原や異常な分子を標的とする薬剤が使用されます。従来の抗がん剤に比べて正常細胞への影響が少なく、副作用が抑えられる可能性があります。
最も代表的な薬剤は、B細胞の表面にあるCD20を標的とするリツキシマブです。CD20陽性の非ホジキンリンパ腫に対し、化学療法と併用して使用されることが多く、現在の標準治療の一部となっています。
その他、再発・難治例に対しては、ブレントキシマブ ベドチン(CD30抗体)、ポラツズマブ ベドチン(CD79b抗体薬物複合体)などが使用されることがあります。
分子標的薬は一般的に副作用が軽度とされていますが、インフュージョンリアクション(投与直後のアレルギー反応)や、発熱、皮疹、肺炎、肝障害などに注意が必要です。
使用する薬剤によって異なるため、治療中は医師の管理のもと副作用の兆候を早期に把握・対処することが重要です。
放射線治療は、がん病変に高エネルギーのX線を照射し、がん細胞を破壊する局所治療です。限局期(Ⅰ・Ⅱ期)のリンパ腫や、局所再発時に化学療法と併用して実施されます。
また、腫瘤による圧迫症状(気道閉塞、脊髄圧迫など)や痛みの緩和、脳や骨への転移に対する症状緩和目的でも照射が選択されます。
放射線治療の副作用は、照射部位により異なります。よくみられるものには以下があります:
通常、これらは一時的であり、照射終了から数週間〜数か月で回復が期待されます。
造血幹細胞移植は、大量化学療法や全身照射によって一度破壊した造血機能を、移植によって再構築する治療です。再発・難治性の悪性リンパ腫に対して根治を目指す治療法として選択されることがあります。
移植には以下の2種類があります:
年齢や全身状態、ドナーの有無によって選択肢は限られます。GVHD(移植片対宿主病)や感染症といったリスクもあり、専門施設で慎重な検討が必要です。
悪性リンパ腫は様々な病型を持っているため、患者の悪性リンパ腫がどのようなタイプであるのか、検査によって詳細を確認しなければなりません。
検査には複数のものがあり、目的によって使い分けることが求められます。
悪性リンパ腫の病型を診断し、治療プランを選択するために、最重視されるのがリンパ節生検や腫瘍生検といった病理検査です。
腫瘍の一部を切り取り、細胞の状態を顕微鏡下で観察します。悪性リンパ腫の病型は細かく分類されており、癌細胞の状態と照らし合わせながら癌のタイプを判断します。また、採取された細胞は、改めて染色体検査や遺伝子検査へ使用されることもあるでしょう。
血液細胞に由来する悪性リンパ腫は、血液が巡る全身に癌が発生したり転移したりするリスクがあります。そのため、治療を開始する前にどの程度の範囲で癌が広がっているのか、正確に診断されなければなりません。
加えて、悪性リンパ腫の治療では化学療法をベースとした全身療法が基本となるため、そもそも抗がん剤などを使用できるかどうか患者の健康状態を確認することも重要です。
血液検査や尿検査によって、全身の状態を総合的に診断します。特に肝臓や腎臓の機能を確認して、化学療法などに耐えられる状態か、副作用のリスクなども含めて検討します。
画像診断には、一般的なレントゲン撮影や、超音波を利用した臓器のエコー検査(超音波検査)などの他にも、CT検査やMRI検査といったものがあり、必要に応じて実施されることが必要です。
癌細胞は健常な細胞よりも多くのエネルギーを使うという性質から、癌細胞は積極的にエネルギー源(糖分)を接種しようとします。そのため、あらかじめ放射性物質を含ませたブドウ糖液を投与した上で、放射線を追跡する特殊カメラを活用して、どの部位に癌細胞があってブドウ糖液が集中しているのか診断することが可能です。
放射性物質を含んだブドウ糖液の薬剤を注射し、薬剤が臓器や組織に取り込まれた状態(体内分布)を特殊なカメラで映像化します。他の検査に比べて小さな(早期の)病変を検出できるため、悪性リンパ腫では治療効果の判定にも積極的に用いられています。
引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 悪性リンパ腫 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/treatment.html)
悪性リンパ腫では骨髄にも影響を及ぼしやすいため、骨髄を採取して癌の有無を検査します。
腰の骨に針を刺して骨髄液を吸引する骨髄穿刺や、少量の組織を採取する骨髄生検で骨髄中の細胞や組織の検査を行います。
引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 悪性リンパ腫 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/treatment.html)
悪性リンパ腫では消化管へ癌が浸潤しているケースも多く、内視鏡検査によって消化管内の状況を確認することも大切です。
内視鏡検査では、胃の内壁を撮影した映像を医師が観察したり、組織の一部を採取して状態を確認したりします。また、大腸への浸潤を起こしやすいというリスクから、必要に応じて大腸内視鏡検査を実施することもあります。
主に胃の内視鏡検査が行われ、胃の内部を直接観察して病変の有無を調べたり、組織を採取したりします。MALTリンパ腫はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染が発症に関連していることが多いため、感染の有無についても検査を行います。
引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 悪性リンパ腫 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/treatment.html)
悪性リンパ腫が脳や脊髄へ拡大していると疑わしい場合、腰椎に針を刺して脳脊髄液を採取し、検査します。
悪性リンパ腫の原因として、ウイルス感染が考えられることもあるでしょう。また、ウイルス感染があった場合、治療中に合併症のリスクが増大します。そのため、ウイルス感染など危険因子の有無についても検査することが必要です。
悪性リンパ腫の進行度を確認するための指標として、血液中の特定の成分を確認することもあります。また、これらを確認することで治療効果を判断することも可能です。
ただし、検査結果だけで完全に癌の進行度や治療効果を確定することはできず、あくまでも総合的な診断が大切です。
血液検査で病気の勢いを示す指標として血清LDH(乳酸脱水素酵素)、CRP(C反応性蛋白)、可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)などがあります。ただし、これらの検査結果のみで悪性リンパ腫の病状の進行を正確に評価したり、悪性リンパ腫と診断したりすることはできません。
引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 悪性リンパ腫 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/ML/treatment.html)
Ⅰ期 | リンパ腫(癌)がリンパ節あるいはリンパ組織の1ヵ所だけに見られる状態。またはリンパ腫がリンパ外臓器に1ヵ所だけ見られる状態。 |
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Ⅱ期 | リンパ節やリンパ組織の中に2つ以上のリンパ腫が見られるが、横隔膜を境にしてその上側(上半身)か下側(下半身)のどちらか一方にだけ見られる状態。あるいはリンパ外臓器に1ヵ所とリンパ節にも1ヵ所以上のリンパ腫が見られるが、横隔膜を境にして上半身か下半身のどちらか一方だけに見られる状態。 |
Ⅲ期 | リンパ腫が横隔膜を境に上半身と下半身の両方に見られる状態。 |
Ⅳ期 | リンパ腫がリンパ外臓器や皮膚、骨髄、血液中などに広範囲に広がっている状態。 |
また悪性リンパ腫では、以下の3つの全身症状のどれにも当てはまらない場合を「A」、1つでも当てはまる場合を「B」と分類します。
例えば上半身に限定して2ヵ所以上リンパ節にリンパ腫が見られ、38度以上の発熱がある場合には「Ⅱb期」、リンパ腫が上半身と下半身の両方に見られるものの著しい発熱も寝汗も体重減少もない場合には「Ⅲa期」と判断されるわけです。
悪性リンパ腫には「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の2種類があり、本来ホジキンリンパ腫のために作られた「AnnArbor分類」という分類法を、非ホジキンリンパ腫にも利用しています。
ホジキンリンパ腫では、Ⅰ~Ⅱ期を「限局期」、Ⅲ~Ⅳ期を「進行期」としており、非ホジキンリンパ腫では「低悪性度リンパ腫(年単位の進行)」、「中悪性度リンパ腫(週~月単位の進行)」、「高悪性度リンパ腫(日~週単位の進行)」の3つに分類しています。
悪性リンパ腫にはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫とがありますが、ここでは日本人の罹患率が高い非ホジキンリンパ腫の治療について説明します。
Ⅰ~Ⅱ期:
Ⅱ期でも2つのリンパ腫の距離が近い場合には、放射線治療で局所的に癌を攻撃します。進行が非常に穏やかであるため、あえてすぐには治療に入らない「経過観察」がとられる場合もあります。
Ⅱ~Ⅳ期:
化学療法で癌細胞の増殖を抑えます。
Ⅰ~Ⅱ期:
化学療法または放射線療法、あるいはその両方を併用して治療します。
Ⅲ~Ⅳ期:
抗がん剤による化学療法を中心とした治療になります。
Ⅰ~Ⅳ期:
抗がん剤による化学療法が行われます。