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膀胱癌

膀胱癌について解説していきます。

膀胱癌の5年生存率・10年生存率

5年相対生存率(2011-2013年診断症例)

10年相対生存率(2005-2008年診断症例)

膀胱癌が転移しやすい箇所

膀胱癌が転移しやすい箇所はリンパ節、肺、骨、肝臓といわれています。

膀胱癌はどのような癌か

膀胱は、腎臓で作られた尿が腎盂・尿管を経由して運ばれた後に一時的に貯留される袋のような臓器です。

膀胱の内側は移行上皮という粘膜で覆われており、膀胱癌のほとんどがこの移行上皮に生じます。

膀胱癌は進行度により筋層非浸潤性癌、筋層浸潤性癌、転移性癌に大別されます。

膀胱癌の主な症状

膀胱癌の症状で多いのは、赤や茶色の血尿が出ること。血尿は肉眼でもはっきりとわかる血尿(肉眼的血尿)、顕微鏡などで識別できる血尿(顕微的血尿)とにわけられます。

他には頻尿・尿意切迫感・排尿時痛・残尿感・下腹部の痛み・背中の痛みなどの症状がみられます。

膀胱癌が再発しやすい理由・しにくい理由

膀胱癌は最初の治療で癌細胞が完全に取り除かれた場合でも、再発する可能性があります。

特に筋層非浸潤性膀胱癌では、再発率が高く、定期的な膀胱鏡検査による監視が必要です。

再発には、膀胱内での新たな腫瘍の発生や、他の部位への転移が含まれます。

膀胱癌に用いられる治療法

膀胱癌が疑われた場合、最初に病状の診断と治療を兼ねて内視鏡を用いた「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)」が実施されます。そして、その際の結果を参考にしながら、さらにどのような治療法が選択されるか判断される点が特徴です。

内視鏡治療

内視鏡を尿道から膀胱へ挿入して、膀胱癌や合併症の治療を行う方法です。膀胱癌の検査・診断を兼ねて最初に行われる治療法として経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)があります。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

膀胱へ内視鏡を挿入して、癌細胞を電気メスによって切除します。また、切除した癌細胞を検査することで、癌の状態を診断する点でも重要です。そのため、TURBTは大部分の膀胱癌において活用されている治療法です。

手術には全身麻酔か腰椎麻酔が用いられ、筋層非浸潤性の膀胱癌であればTURBTによって癌を切除することも期待できます。また、切除組織の病理検査により深達度や悪性度を評価し、必要に応じて追加TURBTや他の治療法が検討されます。

TURBTによる合併症リスク

尿道へ内視鏡を挿入するという治療の特性上、TURBTでは血尿や頻尿といった合併症を生じさせるリスクがあります。出血量が多くて血尿が悪化している場合には、カテーテルを用いた膀胱内洗浄が行われます。

重篤な合併症として膀胱穿孔のリスクもありますが、適切な管理によって多くは改善可能とされています。

膀胱内注入療法

尿道からカテーテルを挿入して、膀胱内に特定の薬剤を注入する治療法です。TURBTによって筋層非浸潤性膀胱癌であると認められた場合に採用され、再発や進行を防ぐ目的で用いられます。上皮内癌(CIS)に対しては治療目的でも実施されます。

細胞障害性抗がん薬注入療法

TURBTの後に、再発予防として行われる注入療法です。主に低〜中リスクの筋層非浸潤性膀胱癌に対して実施され、薬剤の種類や投与スケジュールは個別に調整されます。

BCG(ウシ型弱毒結核菌)注入療法

高リスク筋層非浸潤性膀胱癌やCISに対しては、BCG注入療法が標準治療とされます。BCGは免疫系を刺激し、癌細胞に対する免疫反応を誘導します。

BCG注入療法は高い治療効果が期待される一方で、副作用の頻度も高く、注入量や治療スケジュールは厳密に管理されます。

副作用とその対応

膀胱内注入療法の副作用には、頻尿、排尿時痛、血尿、発熱などがあり、特にBCG注入では強い炎症反応が起こることがあります。副作用が強い場合は、投与スケジュールの変更や中止が検討されます。

まれに間質性肺炎や敗血症など重篤な合併症が起こることもあるため、治療中は慎重な経過観察が求められます。

外科治療

TURBTによって膀胱癌が「筋層浸潤性膀胱癌」であると判明した場合、転移のない癌であれば、手術によって膀胱の全てを取り除く膀胱全摘除術が標準治療です。また、膀胱を切除した場合、尿を排出する経路が失われるため、併せて尿路変向術が実施され、新しく尿の通り道を作ることもあります。

膀胱全摘除術

男性の場合、膀胱や前立腺、精嚢といった周辺臓器も含めて全てを摘出します。また、尿道への転移が疑われた場合は、再発を予防するために尿道も併せて切除されます。女性の場合は、膀胱に加えて子宮や膣の一部、尿道といった臓器を切除するため、将来的に妊娠を希望している場合はあらかじめ主治医と相談して、治療方法を十分に検討しておかなければなりません。

膀胱全摘除術後の合併症

手術の傷口の炎症や化膿など、外科治療に伴う物理的なダメージに起因した合併症の他にも、膀胱全摘除術では生殖器を取り除くことで生じる合併症があります。女性であれば妊娠への影響があったり、男性であれば男性機能の障害が生じたりといったこともあるでしょう。術後の生活の質(QOL)を高めるためにも、術前にしっかりと主治医と相談しながら、どのような治療プランが最善なのか十分に検討した上で、納得して治療へ進むことが必要です。

膀胱全摘除術を行うと、男性の場合、射精ができなくなります。また、前立腺側面を走行する勃起神経を切除することが多く、その場合には勃起機能も失われます。がんの状態によっては勃起神経を温存できることもありますが、それでも十分な勃起が得られないこともあります。

女性の場合、子宮と腟の一部を膀胱と一緒に切除することが一般的です。この場合、腟が少し短くなりますが、性交渉は可能です。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス|膀胱がん 療養

尿路変向術

膀胱や尿道を摘出してしまうと、体内で作られた尿が体外へ排出されなくなるため、改めて尿の通り道(尿路)を作ってやらなければなりません。この手術を「尿路変向術」と呼びます。

尿路変向術には、「回腸導管造設術」「自排尿型新膀胱造設術」「尿管皮膚ろう造設術」といった複数の方法がありますが、それぞれに特徴があり、例えば回腸導管造設術では術後に「ストーマ装具(採尿袋)」といった機具を使って尿を回収しなければなりません。また、自排尿型新膀胱造設術の場合は、自分の尿道を使って排尿できるものの、特別な排尿訓練を術後に受ける必要があります。

どの術式を採用するにしても、術後は新しく作られた尿路と一生付き合っていくことになります。そのため、どの方法によって尿路を変更するかは、癌の状態や患者のライフスタイルなどを考慮しながら、長期的な視点からも検討されることがポイントです。

放射線治療

放射線を癌細胞に当てて縮小させる放射線療法は、膀胱癌では標準治療として採用されていません。ただし、全身の状態を診断し、患者の体が外科治療に耐えられないと判断されたり、筋層浸潤性膀胱癌であっても膀胱を温存したいと希望したりする場合には、放射線療法による治療が進められることもあります。

放射線療法は、単独で行われることは少なく、TURBTや薬物療法などと組み合わせた集学的治療の一部として行うことが一般的です。また、がんが進行したことによる膀胱出血や、骨転移による痛みなどの症状を和らげる目的で、放射線治療を行うこともあります。

放射線治療は、がんに放射線をあてて縮小させる治療法です。膀胱がんでは標準治療ではありませんが、筋層浸潤性膀胱がんで膀胱の温存を希望する場合や、全身状態などから膀胱全摘除術が難しい場合に、TURBTや薬物療法などと組み合わせた集学的治療の一部として行うことがあります。また、がんが進行したことによる膀胱出血や、骨転移による痛みなどの症状を和らげる目的で、放射線治療を行うこともあります。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス|膀胱がん 治療

薬物療法

手術による癌や膀胱の切除が難しい場合、あるいは再発癌や転移癌に対しては、薬物療法が標準治療となっています。

膀胱癌の標準治療として採用されている薬物療法には、細胞障害性抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いたものがあり、どれを採用するか決めるには主治医の診断が必要です。

細胞障害性抗がん薬

膀胱癌の薬物療法として最初に用いられる薬剤です。細胞障害性抗がん薬による治療では、癌の状態や治療方針に合わせて複数の薬剤から適切なものが選出されます。

進行していて切除が難しい場合や、転移がある場合には、ゲムシタビンとシスプラチンを併用するGC療法を行います。腎機能に障害がある場合には、ゲムシタビンとカルボプラチンを併用するGCarbo療法を行うことがあります。また、膀胱全摘除術の前に、手術の効果を高めることを目的として、シスプラチンを基本とした薬物療法を行うこともあります。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス|膀胱がん 治療

免疫チェックポイント阻害薬/免疫療法

細胞障害性抗がん薬で期待された効果が認められなかった場合、免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物療法が選択されることもあります。

免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物療法は「免疫療法」としても分類されます。ただし、膀胱癌に対する免疫療法の活用はまだ研究中であり、2024年6月現在、治療効果についてエビデンスのある免疫療法は限られています。

免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2024年6月現在、膀胱がんの治療に効果があると証明されている方法は、免疫チェックポイント阻害薬を使用する薬物療法と、BCGを用いる膀胱内注入療法のみです。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス|膀胱がん 治療

リハビリテーション

膀胱癌の治療では、実施後に排尿障害や生活習慣の改変といったリスクがあります。そのため、それらのリスクを軽減しながら、可能な限り早期に日常を取り戻すためにも、リハビリテーションを行うことは欠かせません。

膀胱癌を再発させないための予防法

膀胱癌は喫煙により発症のリスクが2〜4倍高まるといわれています。

また膀胱癌はゴムや革、色素工場で使用されるアリニン色素、ベンチジンなどの染料への長期にわたる接触なども原因になるといわれています。

他に因子として挙げられているものには、食べ物ではワラビやゼンマイ、薬では鎮痛剤のフェナセチン、そのほか中東や北アフリカの地方病である住血吸虫症など。

予防するためには、これらの因子と接触する機会を避けることです。仕事など、どうしても接する場合は、人体に触れることのないようマスクやグローブを着用するといった対応策が必要となります。

また水分を多く摂取する人は膀胱癌のリスクが低いともいわれているため、水分摂取を心がけても良いかもしれません。

癌が再発した場合は、癌治療専門病院へ行き、早めに適切な治療を行う事が重要です。

膀胱癌のステージ

ここではステージごとの膀胱癌の状態について解説します。

ステージ分類

膀胱癌のステージは、0(0a、0is)、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの6段階に分類されます。病気が進行するにつれて、数字の値は大きくなっていきます。

0a期 膀胱の内側にある粘膜に、表面がぶつぶつと隆起した小さなキノコのような腫瘍(癌)が突出している状態です。腫瘍の形状から、乳頭癌とも呼ばれています。
0is期 膀胱の内側の粘膜に、平たい腫瘍が広がっている状態です。この腫瘍は、上皮内癌とも呼ばれます。
Ⅰ期 癌が膀胱の粘膜の下層まで広がっている状態です
Ⅱ期 癌が膀胱の粘膜の層を超え、その外側にある筋肉の層に浸潤している状態です。
Ⅲ期 癌が膀胱の粘膜・筋肉の層を超え、周辺にある脂肪組織まで広がっている状態です。また、子宮や精嚢といった膀胱周辺の生殖器に浸潤している場合も、このステージに分類されます。
Ⅳ期 癌が膀胱や周辺組織を超えて、骨盤壁または腹壁まで浸潤している状態です。また、リンパ節への転移か、膀胱以外の臓器への転移が見られる場合も、このステージに分類されます。

ステージの分類方法

膀胱癌のステージは、「癌が膀胱やその周辺のどの辺りまで広がっているか」「リンパ節への転移があるか」「他の臓器への転移があるか」の3つの指標に基づいて分類されます。

例えば、癌が膀胱内側の粘膜のみに留まっており、リンパ節や他の臓器への転移も見られない場合は、ステージは0に分類されます。しかし、癌が膀胱の粘膜に留まっていても、リンパ節か他の臓器、もしくはその両方に転移が見られる場合は、ステージⅣに該当します。

ステージごとの治療方針

0期

ステージ0の膀胱癌に対しては、尿道を経由して内視鏡を膀胱内に挿入し、先端にある電気メスで腫瘍を切除する手術方法(TURBT)が用いられます。内視鏡を用いた手術は、開腹手術に比べて体へ負担が少ない治療法です。

また、手術後に癌が再発するリスクが高いと判断された場合は、膀胱内に抗がん剤やBCG(牛型弱毒結核菌)を注入する治療が行われることもあります。

Ⅰ期

主な治療方法は、手術と、抗がん剤などの薬剤を膀胱内に注入する注入療法の2つです。手術の場合は、病気の状態に応じて内視鏡を使って腫瘍部分を切除するTURBTか、膀胱や前立腺・子宮などを摘出する膀胱全摘除術が選択されます。

Ⅱ~Ⅲ期

治療は、手術と抗がん剤による治療を組み合わせて行われます。手術は基本的に開腹しての膀胱全摘除術が選択されますが、患者さんにとって全摘手術が危険であると判断された場合などには、TURBTと抗がん剤に放射線治療を組み合わせて治療を進めることも。

Ⅳ期

主に抗がん剤による治療や、放射線治療が行われます。出血や痛みなどの苦しい症状を軽減し、病をコントロールしながら生きていくための治療を行うことが重要です。