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血糖値と癌

掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。

闘病患者の多い癌と糖尿病ですが、この2つの疾患に関連性があることは意外に知られていないようです。癌と糖尿病の関係や癌治療における血糖値上昇のリスク、癌の再発予防にも効果があるのではないかと考えられている糖尿病治療薬についてご紹介します。

癌と糖尿病の関係

そもそも(2型)糖尿病とは、栄養過多と運動不足などにより膵臓の働きが弱まることや、膵臓がつくりだすインスリンの働きを阻害する物質が体内に溜まることで、血液中の糖分をうまく体内に取り込めなくなる病気です。血液中の血糖値が高い状態のままになっていることから動脈硬化や腎症などの重篤な合併症を引き起こします。一方、癌とは細胞が分裂する際にコピーエラーを起こし、異常な細胞が増殖していくことで起こります。

一見関係なさそうに思える両疾患ですが、2016年に日本糖尿病学会が発表した、同学会の「糖尿病の死因調査」によると、2001年~2010年までに死亡した糖尿病患者の死因は、腎症のような血管障害を抜いて癌がトップになったとのこと。また2013年の同学会の発表では、「糖尿病患者の発癌リスクはそうでない人の1.2倍」とされています。具体的には、肝臓がんリスクが通常の2.5倍、子宮内膜がんが2.1倍、すい臓がんが1.82倍…と続いており、0.84倍の前立腺がんを除いてほぼすべての癌において発症リスクが上がることが明らかになりました。

糖尿病が癌発症リスクを高めてしまう原因は、今のところハッキリと解明されたわけではありませんが、肥満や運動不足、食習慣といったリスクファクターは癌と糖尿病に共通のものであることからも、2つの疾患にはある程度の関連性があると予想できます。また糖尿病により高インスリン血症やIGF-1というホルモンの上昇が起こると、これらを使われないまま血液中に大量に残っているインスリンが肝臓や膵臓細胞の中にあるインスリン受容体に作用して、癌細胞を刺激し増殖を促すということも分かってきました。

癌治療が血糖値に及ぼす影響

一方、癌が糖尿病を誘発するという可能性も指摘されており、とくに膵臓がんが原因で糖尿病になってしまうケースは珍しくありません。このようなケースでは、膵臓がんを治療することで糖尿も治るというケースも少なからず見られます。これもまだはっきりと解明されたわけではありませんが、癌細胞から出るサイトカインがインスリン抵抗性を高めているのではないかと言われています。

しかし、癌そのもの以上に糖尿病の引き金になると考えられるのは癌治療のほうで、例えば化学療法に使われるmTOR阻害薬や制吐薬のステロイド、また分子標的薬にも血糖値を上げる副作用を持つものもあるため、もともと糖尿病ではなかった患者が化学療法や分子標的療法で治療している間に糖尿病を発症してしまうケースがあるのです。当然、既に糖尿病患者に対しては、抗がん剤投与とともにインスリンを通常の倍にするなど、応用力のある治療が必要となります。

癌再発予防に糖尿病治療薬が効く?

糖尿病治療薬が癌細胞を抑制し、発症や再発の予防にも効果を発揮することが明らかになってきています。

この明るいニュースをもたらしたのは「メトホルミン」と呼ばれる治療薬。インスリンの分泌を促すことなく血糖値を下げることができる薬として、現在アメリカでは糖尿病治療薬の第一選択薬となっています。この薬が持つ「制御性T細胞抑制効果」には、癌発症抑制効果もあることが分かってきたのです。

「制御性T細胞」とは、体の免疫機能が過剰反応することによって起こる自己免疫疾患を抑制するために存在している細胞なのですが、これが癌に対する免疫反応までも抑制してしまうと、癌を発症してしまいます。つまり「制御性T細胞」の自己免疫疾患の抑制作用だけを残したまま、癌にだけ免疫機能を発動させることができれば理想的というわけです。

メトホルミンはまさに、癌細胞に存在する制御性T細胞にのみ局所的に作用してその増殖を抑える効果を持っているため、結果として癌予防にも効くことが明らかになったのです。

実際、アメリカテキサス大学の発表によるとメトホルミンを服用している糖尿病患者は、そうでない患者と比べて膵臓がんのリスクが62%低下したそう。他の国々からも肺がんや大腸がん、乳がんなど他の癌に対しても発症・再発効果が見られたとの報告が寄せられているようです。