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このページでは、肺癌へのトモセラピー(強度変調放射線治療)を使った治療の特徴や、その他の放射線治療と比較した場合のメリット・デメリットについて、詳しく解説しています。
肺に癌が発生した場合、組織の性質により「小細胞肺癌」と「非小細胞肺癌」に分類され、非小細胞肺癌はさらに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌に分けられます。
肺癌が局所にとどまっている場合には手術が選択されることもありますが、肺は血流やリンパ流が豊富で転移しやすいため、放射線治療が重要な役割を担います。
小細胞肺癌は増殖速度が速いため、早期から抗がん剤と放射線治療を併用する「同時併用化学放射線療法」が標準治療とされています。放射線の照射範囲が小さければ、数週間で終了することもありますが、症例により照射範囲が広がる場合もあります。
非小細胞肺癌で転移がない場合、腫瘍に対してピンポイントで高線量を照射する定位放射線治療(SBRT)が効果的です。治療回数が少なく、周囲臓器への影響も少ないですが、高精度な位置決めが求められます。
進行した非小細胞肺癌では、化学放射線療法または免疫療法との併用が一般的ですが、体力的に抗がん剤が難しい場合、放射線単独治療が選択されることもあります。
トモセラピーは、CT画像を毎回取得して照射位置を確認しながら、360度の多方向から強度変調した放射線を照射できる治療法です。周囲の正常組織の被ばくを抑えつつ、腫瘍に集中的な治療を行うことが可能です。
また、呼吸により動く肺の腫瘍に対しても、呼吸同期や画像誘導(IGRT)技術を活用することで、高精度な位置補正と照射が可能です。
トモセラピーでは、複数の病変に同時照射が可能なため、肺から他部位へ転移した場合の多発病巣にも対応できる柔軟性があります。
腫瘍の大きさや深さに応じて放射線強度を調整でき、治療期間や通院回数の短縮にもつながることが期待されます。
トモセラピーは、高精度な照射が可能なため、心臓・食道・健側肺などへの影響を最小限に抑えることができます。特に、高齢者や持病がある患者でも治療可能なケースが増えています。
複数病巣への同時照射が可能なため、従来よりも1回あたりの治療範囲が広がり、通院日数や照射回数を削減できます。
トモセラピーは画像誘導技術により、腫瘍の動きを把握しながら高精度に照射が可能で、呼吸移動による位置ズレの補正に優れています。
皮膚炎、咳、喉の違和感、疲労感などの副作用が発生することがあります。特に広範囲照射時や再照射時にはリスクが高まります。
広範囲なリンパ節転移や多発遠隔転移を伴う症例では、トモセラピー単独では治療が不十分であり、化学療法や免疫療法との併用が必要になる場合があります。
トモセラピーは特殊な装置を用いるため、治療を提供している施設が限られており、通院の負担が増す可能性があります。