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ここでは、脊椎骨(背骨)に発生する脊椎腫瘍について、トモセラピー治療の有効性や、脊椎腫瘍にトモセラピーを活用するメリットやデメリットを総合的にまとめました。
脊椎腫瘍とは、脊椎骨(背骨)に発生する腫瘍であり、原発性と転移性の2種類があります。原発性脊椎腫瘍には骨の組織から生じる良性腫瘍や悪性腫瘍(肉腫)があり、転移性脊椎腫瘍は他臓器の癌が骨に転移したもので、基本的に悪性です。
脊髄腫瘍とは、脊髄やそれを包む硬膜・くも膜・軟膜から発生する腫瘍で、こちらも原発性と転移性に分類され、原発性には良性・悪性があります。
脊椎腫瘍では骨の痛み(骨痛)のほか、神経の圧迫によりしびれ、脱力、感覚異常などの神経症状が現れることがあります。特に腰椎に発生した場合は、骨の脆弱化により病的骨折を起こすリスクもあります。
悪性腫瘍は進行が早く症状も急激に現れるのに対し、良性腫瘍は数ヶ月~数年かけてゆっくりと進行するため、発見が遅れることもあります。違和感や症状に気づいた時点で早めに医師へ相談することが大切です。
可能であれば腫瘍を外科的に摘出しますが、腫瘍の位置や進行度により、完全に取り切れない場合は他の治療法を併用することになります。
腫瘍が広範囲である場合や、手術が困難な症例では化学療法が検討されます。がん種により薬剤の選択肢が異なるため、主治医との相談が不可欠です。
手術が難しいケース、または補助療法として放射線治療が行われます。転移性脊椎腫瘍では、最初から手術を行わず放射線治療のみで症状を緩和するケースもあります。
従来の放射線治療は、1回に照射できる部位が限定され、複数の病変に対応するには調整が必要でした。一方、トモセラピーは360度全方向から放射線を照射でき、複数部位に対し同時照射が可能です。
放射線の強度を個別に調整し、周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えることができるため、特に脊椎など神経の近くにある腫瘍の治療に適しています。
トモセラピーは原発性・転移性を問わず、患者の状態に応じた柔軟な治療が可能な技術です。
一度に複数部位を治療できるため、従来よりも治療回数・期間を短縮でき、患者の身体的・時間的負担を軽減できる点が大きな利点です。
2010年の診療報酬改定により、限局性の固形悪性腫瘍(血液がんを除く)に対してトモセラピーは保険適用となっています。高精度治療でありながら、費用負担を抑えた治療が可能です。
トモセラピー専用機器とIMRT技術に熟練したスタッフが必要なため、受診可能な施設が都市部に集中しているなど、地理的な制約があります。
一部の症例や治療条件によっては、トモセラピーが保険適用外となる場合もあります。その際は自由診療となるため、治療費が高額になる可能性があります。事前に担当医に確認してください。