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当ページでは、副腎癌の概要と再発について解説しています。
副腎癌とは、生命維持のために必要な各種のホルモンを分泌している「副腎」に発生する癌。主に10歳未満の小児、または30~40代の成人に見られる希少癌の一種です。
再発リスクの高い癌として知られているため、治療後は再発予防に向けた生活習慣の見直し、定期検診の受診などが非常に大切となります。
副腎癌とは、生命を維持するための重要なホルモンを分泌している「副腎」という臓器に発生する癌のこと。副腎とは腎臓の上に左右一対で存在する小さな臓器で、解剖学的には副腎皮質と副腎髄質に分かれますが、このうち副腎皮質から発生する癌を副腎癌と言います。
副腎癌の初期症状はほとんどありませんが、腫瘍が大きくなるにつれて腹痛や便秘、吐き気などの症状が現れることがあります。また、副腎ホルモンの異常分泌により糖尿病や高血圧、肥満などの症状につながる例も見られます。
副腎癌の発症原因については、一部の症例に遺伝子が関与していることが判明しているものの、ほとんど解明されていないのが実情です。
なお、世界保健機構(WHO)では、副腎癌のステージを次のように定義しています。
副腎癌は再発リスクの高い癌とされ、腫瘍切除後の再発率は50~70%とも言われています。
再発する理由は明らかではありませんが、一般的に考えられるものとして、手術後の残存癌細胞が挙げられるでしょう。手術で取り除くことができなかった一部のがん細胞が増殖し、再び大きくなって再発へと至るケースです。
ほかにも、他の癌と同様に免疫力の低下やウイルス感染、不適切な生活習慣などは、再発の原因につながると考えられます。
これらの再発原因について、手術後の残存癌細胞は患者自身が対処できる問題ではありません。ただし、生活習慣の改善については、患者自身の心構え次第となります。
飲酒や喫煙を控え、十分な睡眠を取って健康的な日常生活を送ることは、副腎癌の再発予防に向けた大切な要素の1つになるでしょう。
副腎癌が再発した場合でも、再発初期の段階で特徴的な症状を自覚することはほとんどありません。手術後は、再発を予防するための適切な治療を受けるとともに、再発を早期発見できるよう定期的な検査を受けることが大切です。
また、定期的な検査と並行し、自身でも次のような点に注意して過ごしましょう。
以上の点に加え、何らかの違和感や気になる点を自覚した場合には、速やかに医師へ相談しましょう。
副腎癌の再発予防に向け、生活習慣を見直すことが大切です。生活習慣に関する主なポイントを見てみましょう。
副腎癌を含め、多くの癌に関与しているとされるのが喫煙と飲酒です。禁煙と禁酒(または節酒)を心がけ、副腎癌の再発リスクを低下させましょう。
自分の意志による禁煙・禁酒が難しい方は、クリニックの禁煙外来やアルコール外来の受診を検討するようおすすめします。
肥満や痩せ過ぎは癌の発症率を高めることが分かっています。食べ過ぎやダイエットのし過ぎを避け、適正なBMI(肥満度を示す指標)を維持するよう心がけましょう。
また、野菜を積極的に摂ること、減塩することなども癌の再発予防に良いとされています。
身体活動量が多い人ほど、癌の発症リスクが低いという報告があります。身体活動は心疾患リスクも低下させることが分かっているため、全身の健康のために適度な運動を日々心がけることが大切です。
なお、生活習慣とは異なりますが、副腎癌は再発しやすい癌であることから、再発の早期発見・早期治療のため、定期的に医療機関で検診を受けることが非常に大切です。主治医の指示に従い、必ず定期検診を受けるようにしましょう。
副腎癌の再発診断は主にCTで行われますが、CT検査の結果、再発が認められた場合には、一般にミトタン(※)による薬物療法が検討されます。副腎癌に対するミトタン以外の化学療法の有効性は確立されていないため、他の化学療法を選択する際には、患者の状態を確認した上で慎重に検討される必要があります。
なお、副腎癌の治療は手術を第一選択とし、補完的にミトタンによる治療が行われることが一般的であり、通常、放射線治療は選択されません(副腎は放射線への感受性が弱いとされています)。
※ミトタン…副腎皮質ホルモンの生合成を阻害し、かつ皮質細胞に対する細胞毒性を持つ薬剤
副腎癌の辛い治療を経て一時は改善の兆しが見えたにも関わらず、再発の知らせを聞いた患者は、精神的に大変重い状況となります。改めて再発予防に向けた生活習慣を心がける必要がありますが、あわせて、少しでも患者の不安やストレスを軽減させられるよう、かつ生活の質を高められるよう、様々なサポートを検討してみることも大切です。
サポートの具体例としては、専門家によるカウンセリングや患者会、支援グループへの参加、各種のサークル活動など。また、患者の体調が許すならば、気分転換として家族や友人などと旅行へ出かけることも有効でしょう。
患者の性格等にも鑑み、再発時における適切な心のケアを行うことが大切です。
副腎癌は発症率が極めて低い希少癌に分類されています。ただし副腎癌は、手術を経ても再発率が高いタイプの癌でもあることから、一度発症した方は、再発予防に向けて生活習慣の見直しを行うことが非常に大切です。
再発予防に効果的とされる生活習慣は、禁煙・禁酒、適正体重の維持、適度な運動など。仮に再発しても迅速に対応できるよう、医師の指示に従い、必ず定期検診を受けましょう。
また、たとえ副腎癌の再発が判明しても、自暴自棄にならず主治医を信じて治療に励む姿勢が大切です。あわせて、少しでも安定した気持ちを持ち続けられるよう、かつ少しでも生活の質を高められるよう、家族や友人、専門家、患者会、支援グループ、サークルなど、多くの人たちと関わりを持ち続けるようにしましょう。
参照元:副腎皮質がん(ふくじんひしつがん)|国立がん研究センター
参照元:副腎腫瘍|東京女子医科大学病院
参照元:副腎がん|社会福祉法人 恩賜財団 済生会
参照元:副腎|名古屋大学医学部付属病院
参照元:副腎癌|がん有明病院
参照元:特集2 副腎皮質癌|日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
参照元:科学的根拠に基づくがん予防|国立がん研究センター
参照元:副腎がん|鹿児島大学病院