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掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。
癌細胞が血液やリンパ液の流れに乗って離れた臓器や組織に移動し、そこにとどまって成長することを転移といいます。
胃癌の転移で最も多いのはリンパ節転移で、早期の段階でも発生することがあります。また、肝臓や肺などへの血行性転移、腹腔内への腹膜播種も重要な転移形式として知られています。特に進行胃癌やスキルス胃癌では、腹膜播種の頻度が高く、予後に大きく関わります。
転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。
胃がんの転移として、主に以下の3つのものがあります。
(1)血行性転移:がん細胞が血液に乗って、肝臓や肺などに転移する。
(2)リンパ行性転移:リンパ管に入り、周囲や遠方のリンパ節に転移する。
(3)腹膜播種:胃の一番外側の膜(漿膜)を破り、お腹の中にがん細胞が散らばって広がる。
一方、初回治療で癌を根治したと考えられていても、同じ部位または離れた臓器やリンパ節に再び癌ができることを再発といいます。胃癌の再発には局所再発・リンパ節再発・遠隔転移(肝・肺・腹膜)があり、再発時の治療方針は再発部位・患者の体力・以前の治療歴などを考慮して、主に薬物療法(化学療法・分子標的薬・免疫療法)が選択されます。
胃癌は胃の粘膜の細胞がなんらかの原因で癌化し、増殖を繰り返すことで発症します。
特殊な胃癌として胃壁の中で癌が広がって表面に現れない「スキルス胃癌」というものもあります。スキルス胃癌は表面に現れないため見つけにくく、見つかった時には多くの患者さんで転移がみられるようです。
胃癌の症状は早期では全くといっていいほど症状がなく、進行をしても無症状の場合があります。合併して生じる胃潰瘍や慢性胃炎の症状によって現れる事が多いです。
みられるものとして食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、吐血・下血、腹痛、腹部膨満感、胸焼けといった症状があります。
胃癌の再発後の転移で多いとされているのが腹膜播種で、胃に残っていた癌細胞が腹膜へ散らばるように転移します。
他には胃癌細胞が血液に乗って肝臓に転移したり、リンパ節に転移したりして再発する場合があります。
再発した胃癌の治療では、癌細胞が胃にとどまっている場合には外科手術を行いますが、遠隔転移がある場合は外科手術よりも全身治療が優先されます。
遠隔転移がある場合には、化学療法(抗がん剤治療)を中心に、患者の状態に応じて放射線治療や免疫療法、分子標的治療が選択されることがあります。これらの治療は、進行を抑える、症状を軽減することを目的としています。
化学療法は、進行胃癌および再発胃癌の標準治療とされており、使用する薬剤は癌の組織型、HER2発現の有無、全身状態、治療歴などに基づいて選択されます。
主に使用される抗がん剤には、フルオロピリミジン系(TS-1、カペシタビンなど)、プラチナ製剤(シスプラチン、オキサリプラチン)、タキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル)などがあります。
HER2陽性胃癌に対しては、トラスツズマブ(ハーセプチン)との併用療法が一次治療で推奨されており、2023年以降はさらにエンハーツ(トラスツズマブ・デルクステカン)などの新しい抗HER2薬も使用可能となりました。
また、MSI-HighやPD-L1高発現などのバイオマーカーを持つ症例では、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(オプジーボ)の併用も有効とされ、標準治療の一環として位置づけられています。
抗がん剤治療では、術後補助化学療法としてはTS-1単剤が早期から使われており、ステージIIIなどではTS-1+オキサリプラチン(SOX療法)などの併用も用いられます。再発や遠隔転移例では一次~三次化学療法を通じて、個別に薬剤を選択・組み替えながら治療が行われます。
胃癌に対する放射線治療は、根治目的ではあまり行われませんが、症状緩和(出血、疼痛、通過障害など)や再発例に対する局所コントロールを目的に実施されることがあります。
胃の通過障害に対しては、狭窄部位の腫瘍を縮小させるために放射線照射を行うケースがあり、必要に応じてTS-1などの化学療法剤と併用することで治療効果の増強を図ることもあります。
放射線治療の方法としては、照射範囲を精密に絞って腫瘍に集中させる強度変調放射線治療(IMRT)などの技術も応用されるようになってきています。特に再発や切除不能例に対しては、全身治療の補助的手段として期待されています。
副作用としては、放射性胃炎、十二指腸炎、下痢、嘔気、倦怠感などが見られるほか、まれに潰瘍や穿孔など重篤な障害が生じることもあるため、治療中および治療後の定期的なフォローが必要です。
また、胃癌は生活習慣の見直しによっても予防が可能だと考えられています。塩分の摂りすぎは胃癌のリスクを高めるといわれており、食生活の改善は胃癌の予防に有効だといえるでしょう。日本特有の塩分濃度が高い食品には味噌汁や漬物、塩蔵食品などがありますが、特に男性はいずれの食品も摂取回数が多いほど胃癌のリスクも高くなっているようです。塩分濃度が約10%と非常に高い塩蔵魚卵(たらこ、筋子など)や塩辛、練うになどでは、男女にかかわらず摂取回数の多い人が胃癌のリスクも上昇しています。塩分だけではなく、加工の際に生成される化学物質が胃癌のリスクに影響している可能性もあります。
このほかの生活習慣として、ストレスをためないこと、適度な運動を習慣づけることも胃癌再発のリスクを抑えるために大切です。
また、感染が日本人のがんの原因の20%を占めていることはご存じですか。肝炎ウイルスによる肝臓癌、ヒトパピローマウイルスによる子宮頸癌などと同じく、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃癌もそのひとつです。前述の塩分の摂り過ぎも、ヘリコバクター・ピロリの持続感染を引き起こす要因になるので注意が必要です。
自治体で実施されている癌検診は、癌の早期発見と適切な治療の開始で、癌による死亡を減少させることが目的です。日本では、厚生労働省が定める「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が提示されています。
胃癌の検診方法で効果があると考えられているのは、問診のほか胃のエックス線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)のいずれかです。男女とも50歳以上が対象で、2年に1回の間隔で検診を受けられます。胃のエックス線検査については、40歳以上であれば1年に1回受けることが可能です。とはいえ、気になる症状がある場合は検診を待つ必要はありません。早めに医療機関を受診しましょう。
また、癌検診は症状がない健康な人を対象としています。胃癌の治療歴がある人や、治療後で経過観察中の人は、主治医の指示を優先して検査を受けてください。
胃癌の治療方法は、進行の程度や身体の状態などによって決定され、進行の程度は病期(ステージ)で分類され、一般的にはローマ数字を用いて表記。胃癌の場合は早期から進行するにつれてⅠ期~Ⅳ期の大きく4段階に分類されます。
胃癌の病期の分類には、3種類の因子が用いられます。
胃がんの病期は、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決めます。
Tカテゴリー:がんの深さの程度(深達度)
Nカテゴリー:リンパ節への転移の有無
Mカテゴリー:遠くの臓器への転移(遠隔転移)の有無
引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 胃がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment.html)
胃の壁は大きく分けて内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜という5つの層から成る構造になっています。癌は粘膜で発生し、外側に向かって徐々に進行することで最終的には胃の表面に現れます。この深達の程度を示すのがT因子です。
癌は少しずつ大きくなり、発生した部位に近いリンパ管を通ってリンパ節に到達します。こうしたリンパ節への転移の有無を示すのがN因子です。
癌細胞が胃から離れた臓器に転移することを遠隔転移といいます。この遠隔転移の有無を示すのがM因子です。
上記の3種類の因子を踏まえた上で、胃癌のステージ分類をみてみましょう。
Ⅰa期 | 癌が胃の粘膜または粘膜下層にとどまっており、リンパ節転移もみられない初期の胃癌です。 |
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Ⅰb期 | 以下のいずれかの状態です。
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Ⅱa期 | 以下のいずれかの状態です。
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Ⅱb期 | 以下のいずれかの状態です。
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Ⅲa期 | 以下のいずれかの状態です。
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Ⅲb期 | 以下のいずれかの状態です。
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Ⅲc期 | 以下のいずれかの状態です。
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Ⅳ期 | 癌が肺や肝臓など、離れた臓器にまで転移している状態です。 |
ステージⅠa期のように初期で、癌が粘膜層にとどまりリンパ節転移もなく、一度に切除できると判断された場合には内視鏡治療が選択される場合があります。開腹手術と比較して身体的な負担が少なく、胃を温存できるので治療後の生活にも影響が出にくいと考えられます。ただ、合併症として出血や穿孔(胃に穴が開くこと)を起こす可能性があります。
また、お腹に小さな穴を開けて専用のカメラを挿入して癌を切除する腹腔鏡下手術を検討することもあります。
初期の胃癌でも内視鏡治療や腹腔鏡下手術が困難だと判断された場合も含めて、遠隔転移がなければ開腹手術による癌の切除が検討されます。手術後は補助療法として薬物療法を行う傾向にあります。
基本的にステージⅡ期、Ⅲ期も治療方法は大きく変わりません。ただし、手術が困難な場合は薬物療法や免疫療法などが選択されるケースも。放射線治療は大腸や小腸などにダメージを与える可能性が高いため、治療効果の期待が副作用のデメリットを上回ると判断されない限り、行なわれることは少ないと考えられます。
薬物療法は正常な細胞にも影響を及ぼすことが多く、特に粘膜や毛髪、骨髄など新陳代謝が盛んな細胞がダメージを受けることが予想されます。副作用がひどい場合は薬剤を変更したり、治療の中止を検討したりする必要があります。
いずれにしても、胃癌は手術可能であればできる限り早い段階で切除することが重要です。
遠隔転移を伴うステージⅣ期は、手術で癌をすべて取り除く根治治療は困難です。必然的に薬物療法や放射線治療、免疫療法、緩和療法などが選択されることになります。
近年は薬物療法が飛躍的に進歩しており、手術できないような進行胃癌に対しても高い腫瘍縮小効果が期待できるようになりましたが、それでも根治を目指すことはできません。したがって、ステージⅣ期の胃癌に対する薬物療法は、主に生活の質の維持と生存期間の延長を目的に行なわれることになります。
また、食事を摂れなくなるほど癌が大きくなってしまったら、根治目的ではなく食べたものが通過するようにバイパス手術などを行なう場合があります。