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胃癌

掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。

胃癌の5年生存率(2011-2013年診断症例)と10年生存率(2005-2008年診断症例)

5年生存率

10年生存率

胃癌が転移しやすい箇所

胃癌

癌細胞が血液やリンパ液の流れに乗って離れた臓器や組織に移動し、そこにとどまって成長することを転移といいます。

胃癌の転移は周辺のリンパ節がもっとも多く、早期の胃癌でも転移する場合があります。また、以下のように肝臓に転移するケースや、癌細胞が種を蒔いたように腹膜に散らばる播種転移がみられることもあります。

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。

胃がんの転移として、主に以下の3つのものがあります。

(1)血行性転移:がん細胞が血液に乗って、肺や肝臓に転移する。

(2)リンパ行性転移:リンパ管に入り、リンパ節に転移する。

(3)腹膜播種:胃の一番外側の膜(漿膜)を破り、お腹の中にがん細胞が散らばって広がる。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 胃がん 基礎知識(https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/print.html)

一方、初回治療で癌を根治したと考えられていても、同じ部位または離れた臓器やリンパ節に再び癌ができることを再発といいます。再発の治療方法は部位や全身状態、前回の治療内容やその効果などによって決定しますが、主に薬物療法が一般的です。

胃癌はどのような癌か

胃癌は胃の粘膜の細胞がなんらかの原因で癌化し、増殖を繰り返すことで発症します。

特殊な胃癌として胃壁の中で癌が広がって表面に現れない「スキルス胃癌」というものもあります。スキルス胃癌は表面に現れないため見つけにくく、見つかった時には多くの患者さんで転移がみられるようです。

胃癌の主な症状

胃癌の症状は早期では全くといっていいほど症状がなく、進行をしても無症状の場合があります。合併して生じる胃潰瘍や慢性胃炎の症状によって現れる事が多いです。

みられるものとして食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、吐血・下血、腹痛、腹部膨満感、胸焼けといった症状があります。

胃癌が再発しやすい理由

胃癌の再発後の転移で多いとされているのが腹膜播種で、胃に残っていた癌細胞が腹膜へ散らばるように転移します。

他には胃癌細胞が血液に乗って肝臓に転移したり、リンパ節に転移したりして再発する場合があります。

胃癌に用いられる治療法

再発した胃癌の治療では再発した癌細胞が胃にとどまっている場合には外科手術を行いますが、転移がある場合は外科手術は行いません

転移がある場合は抗がん剤治療、放射線治療を行い、進行を遅らせる、増殖を抑える治療を行います。場合によっては免疫療法も行います。

抗がん剤

抗がん剤を使用する化学療法は、胃癌だけでなく様々な癌において有効な治療法ですが、どのような抗がん剤を使用するのかは癌の状態や特徴、全身の症状などを適切に診断した上で選択しなければなりません。

胃癌において使用される化学療法の薬としては、「細胞障害性抗がん薬」の他にも、「分子標的薬」や免疫チェックポイント阻害薬などがあります。

胃癌で使われる抗がん薬としては、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1)、カペシタビン、シスプラチンといったものが複数あり、単独で使用される場合から、組み合わせて使用される場合まで、様々な活用法が存在しています。

胃癌で抗がん剤治療や薬物療法を行う目的としては、手術による治療が難しい場合における化学療法と、再発予防を主目的とする「術後補助化学療法」の2種類があり、それぞれに応じた対策を講じることが欠かせません。

進行性の胃癌や再発胃癌に対する化学療法では、癌の状態や臓器の機能、副作用や通院環境などを総合的に判断した上で、使用する抗がん剤が選定されます。化学療法では一次~三次化学療法まで段階が分けられており、抗がん剤などの効果を見極めながら、段階を引き上げていくといった流れです。

術後補助化学療法では、手術で取り切れなかった微小な癌細胞へアプローチするため、TS-1を基準としながら複数の医薬品が使用されます。

抗がん剤治療では体質による効果の差や副作用もあり、治療経過を詳しく検証しながら判断していくことも重要です。

放射線治療

胃癌治療においては、外科手術が第一選択となるので、放射線治療は進行性の癌や再発癌など、手術だけでは治療が困難と思われる胃癌に対して行われます。

胃癌で放射線治療が選択されるケースとしては、胃癌が進行して腫瘍が増大することで、食べ物が通りにくくなってしまったなどの症状が生じた患者に対して、症状緩和を目的とした放射線照射などが存在しています。また、手術の前に放射線照射を行うことで、あらかじめ癌細胞の状態を落ち着かせて、手術の成功率を高めたり再発率を低下させたりといった場合もあるでしょう。

放射線照射の方法としては、広範囲へ放射線を照射するだけでなく、照射部位を絞ることで癌細胞へ集中的に放射線を浴びさせて、治療効果を上げられる方法があります。また、食べ物によって胃が拡張していると放射線の照射範囲からずれてしまう可能性があるので、胃癌に対する放射線照射は原則として空腹時に行われることも特徴です。なお、胃癌の放射線治療ではTS-1などの医薬品を併用することで、一層に治療効果の向上を目指すこともあるでしょう。

放射線治療の副作用には、放射性胃炎や十二指腸炎があり、食欲低下や倦怠感、吐き気といったものがあります。その他、胃の他の周辺臓器に対する副作用として、腹痛、下痢、軟便などが引き起こされることもあります。

放射線照射後に胃潰瘍や胃穿孔、腸閉塞や腸管壊死といった症状や障害が生まれることもあり、照射後もきちんとしたケアや診断を続けなければなりません。

胃癌を再発させないための予防法

胃癌の初回治療を受けた際に予防のための治療もしっかり受けることです。特に手術後の薬物治療などの術後補助療法は、再発のリスクを大幅に軽減できる治療方法だとされます。

また、胃癌は生活習慣の見直しによっても予防が可能だと考えられています。塩分の摂りすぎは胃癌のリスクを高めるといわれており、食生活の改善は胃癌の予防に有効だといえるでしょう。日本特有の塩分濃度が高い食品には味噌汁や漬物、塩蔵食品などがありますが、特に男性はいずれの食品も摂取回数が多いほど胃癌のリスクも高くなっているようです。塩分濃度が約10%と非常に高い塩蔵魚卵(たらこ、筋子など)や塩辛、練うになどでは、男女にかかわらず摂取回数の多い人が胃癌のリスクも上昇しています。塩分だけではなく、加工の際に生成される化学物質が胃癌のリスクに影響している可能性もあります。

このほかの生活習慣として、ストレスをためないこと、適度な運動を習慣づけることも胃癌再発のリスクを抑えるために大切です。

また、感染が日本人のがんの原因の20%を占めていることはご存じですか。肝炎ウイルスによる肝臓癌、ヒトパピローマウイルスによる子宮頸癌などと同じく、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による胃癌もそのひとつです。前述の塩分の摂り過ぎも、ヘリコバクター・ピロリの持続感染を引き起こす要因になるので注意が必要です。

胃癌の再発を早期発見するための検診

自治体で実施されている癌検診は、癌の早期発見と適切な治療の開始で、癌による死亡を減少させることが目的です。日本では、厚生労働省が定める「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が提示されています。

胃癌の検診方法で効果があると考えられているのは、問診のほか胃のエックス線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)のいずれかです。男女とも50歳以上が対象で、2年に1回の間隔で検診を受けられます。胃のエックス線検査については、40歳以上であれば1年に1回受けることが可能です。とはいえ、気になる症状がある場合は検診を待つ必要はありません。早めに医療機関を受診しましょう。

また、癌検診は症状がない健康な人を対象としています。胃癌の治療歴がある人や、治療後で経過観察中の人は、主治医の指示を優先して検査を受けてください。

胃癌のステージ

胃癌の治療方法は、進行の程度や身体の状態などによって決定され、進行の程度は病期(ステージ)で分類され、一般的にはローマ数字を用いて表記。胃癌の場合は早期から進行するにつれてⅠ期~Ⅳ期の大きく4段階に分類されます。

病期を分類する3つの因子

胃癌の病期の分類には、3種類の因子が用いられます。

胃がんの病期は、次のTNMの3種のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで決めます。

Tカテゴリー:がんの深さの程度(深達度)

Nカテゴリー:リンパ節への転移の有無

Mカテゴリー:遠くの臓器への転移(遠隔転移)の有無

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 胃がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment.html)

T因子=癌の深さの程度

胃の壁は大きく分けて内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜という5つの層から成る構造になっています。癌は粘膜で発生し、外側に向かって徐々に進行することで最終的には胃の表面に現れます。この深達の程度を示すのがT因子です。

N因子=リンパ節への転移の有無

癌は少しずつ大きくなり、発生した部位に近いリンパ管を通ってリンパ節に到達します。こうしたリンパ節への転移の有無を示すのがN因子です。

M因子=遠隔転移の有無

癌細胞が胃から離れた臓器に転移することを遠隔転移といいます。この遠隔転移の有無を示すのがM因子です。

ステージ分類

上記の3種類の因子を踏まえた上で、胃癌のステージ分類をみてみましょう。

Ⅰa期 癌が胃の粘膜または粘膜下層にとどまっており、リンパ節転移もみられない初期の胃癌です。
Ⅰb期 以下のいずれかの状態です。
  • 癌が筋層または漿膜下層に達しているが、リンパ節転移はみられない状態
  • 癌が粘膜または粘膜下層にとどまっているが、1~2個のリンパ節転移がみられる状態
Ⅱa期 以下のいずれかの状態です。
  • 癌が粘膜下層に達していて、6個以内のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が固有筋層に達していて、2個以内のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が漿膜に達しているが、リンパ節転移はみられない状態
Ⅱb期 以下のいずれかの状態です。
  • 癌が粘膜下層に達していて、15個以内のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が固有筋層に達していて、6個以内のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が漿膜に達していて、2個以内のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が漿膜をわずかに越えて腹腔内に達しているが、明らかな腹膜浸潤はみられない状態
Ⅲa期 以下のいずれかの状態です。
  • 癌が固有筋層に達していて、7個以上のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が漿膜下層に達していて、3~6個のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が漿膜を越えて胃の表面に達していて、1~2個のリンパ節転移がみられる状態
Ⅲb期 以下のいずれかの状態です。
  • 癌が漿膜下層に達していて、7個以上のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が漿膜を越えて胃の表面に達していて、3~6個のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が隣接する臓器に達していて、2個以内のリンパ節転移がみられる状態
Ⅲc期 以下のいずれかの状態です。
  • 癌が漿膜を越えて胃の表面に達していて、7個以上のリンパ節転移がみられる状態
  • 癌が隣接する臓器に達していて、3個以上のリンパ節転移がみられる状態
Ⅳ期 癌が肺や肝臓など、離れた臓器にまで転移している状態です。

ステージごとの治療方針

ステージⅠa期

ステージⅠa期のように初期で、癌が粘膜層にとどまりリンパ節転移もなく、一度に切除できると判断された場合には内視鏡治療が選択される場合があります。開腹手術と比較して身体的な負担が少なく、胃を温存できるので治療後の生活にも影響が出にくいと考えられます。ただ、合併症として出血や穿孔(胃に穴が開くこと)を起こす可能性があります。

また、お腹に小さな穴を開けて専用のカメラを挿入して癌を切除する腹腔鏡下手術を検討することもあります。

ステージⅠ~Ⅲ期

初期の胃癌でも内視鏡治療や腹腔鏡下手術が困難だと判断された場合も含めて、遠隔転移がなければ開腹手術による癌の切除が検討されます。手術後は補助療法として薬物療法を行う傾向にあります。

基本的にステージⅡ期、Ⅲ期も治療方法は大きく変わりません。ただし、手術が困難な場合は薬物療法や免疫療法などが選択されるケースも。放射線治療は大腸や小腸などにダメージを与える可能性が高いため、治療効果の期待が副作用のデメリットを上回ると判断されない限り、行なわれることは少ないと考えられます。

薬物療法は正常な細胞にも影響を及ぼすことが多く、特に粘膜や毛髪、骨髄など新陳代謝が盛んな細胞がダメージを受けることが予想されます。副作用がひどい場合は薬剤を変更したり、治療の中止を検討したりする必要があります。

いずれにしても、胃癌は手術可能であればできる限り早い段階で切除することが重要です。

ステージⅣ期

遠隔転移を伴うステージⅣ期は、手術で癌をすべて取り除く根治治療は困難です。必然的に薬物療法や放射線治療、免疫療法、緩和療法などが選択されることになります。

近年は薬物療法が飛躍的に進歩しており、手術できないような進行胃癌に対しても高い腫瘍縮小効果が期待できるようになりましたが、それでも根治を目指すことはできません。したがって、ステージⅣ期の胃癌に対する薬物療法は、主に生活の質の維持と生存期間の延長を目的に行なわれることになります。

また、食事を摂れなくなるほど癌が大きくなってしまったら、根治目的ではなく食べたものが通過するようにバイパス手術などを行なう場合があります。