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当ページでは、喉頭癌の概要と再発リスクについて詳しく解説しています。
喉頭癌とは、のど仏のあたりにある喉頭と言われる部位に発症する癌のこと。他の部位に発症する多くの癌は直接的な原因が不明とされますが、喉頭癌の場合、最大の危険因子は喫煙であり、患者の大多数が喫煙者です。再発予防のためには禁煙が必須となるでしょう。あわせて禁酒(または節酒)や栄養バランスの良い食生活、適度な運動、定期検診の受診なども通じ、可能な限り再発予防を目指しましょう。
喉頭癌とは、喉頭と呼ばれる部位に発症する癌で、頭頸部癌の一種に分類されています。発症する部位により、声門癌・声門上部癌・声門下部癌の3種類に分かれますが、うち全体の約60~70%は声門癌が占めています。
初期症状は、声のかすれ(嗄声:させい)や喉の違和感、飲み込むときの痛みなど。特に声門癌では早期から声がれが現れやすいため、比較的早期に発見されることもあります。しかし、風邪に似た症状なので、大事と考えない方も多いようです。
発症の主な原因は喫煙と飲酒です。とりわけ喫煙の影響は大きいとされ、喉頭癌患者の大多数は喫煙者との報告もあります。喫煙と飲酒の両方が習慣化している方は、さらに発症リスクが高まるとされています。その他、職業性のアスベスト(石綿)曝露、胃食道逆流症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などもリスク因子として指摘されています(ただしHPVの関連は中咽頭がんに比べると低いとされています)。
喉頭癌の病期(ステージ)は、国際的なTNM分類(がんの大きさ・広がり(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)を評価)に基づいて、Ⅰ期・Ⅱ期・Ⅲ期・Ⅳ期の4段階に分かれます。また、Ⅳ期は、病巣の広がり等によりA期・B期・C期の3段階に分類されます。(※TNM分類は定期的に改訂されます。最新の情報は主治医にご確認ください)
これらのうちⅠ期からⅢ期までは、通常、頸部リンパ節転移がありません。ⅣA期でも、リンパ節転移がない場合もあります。ⅣC期では、頸部リンパ節を超えて他の部位(肺や肝臓、骨など)に遠隔転移が認められます。
喉頭癌の再発率は、早期の場合が10~20%程度、進行がんの場合が20~40%と考えられています。再発する場合、そのタイミングの多くは初回治療から2年以内と比較的早いことが、喉頭癌再発の特徴とされます。
再発の主な原因は、初回治療時に根治できなかった微小な残存癌細胞の増殖や、治療後の免疫力の低下などが考えられます。また、喫煙や飲酒など、不適切な生活習慣も再発の大きな要因となります。一部の喉頭がんではHPV感染が関連している可能性もあります。
これら再発要因のうち、残存癌の増殖については、患者自身の努力で対処できるものではありません。一方で、免疫力や生活習慣については、患者の心構えや努力によりリスクを低減できる可能性もあります。特に喫煙・飲酒は原発の喉頭癌の大きな要因でもあることから、再発にも大きな影響があると考えるべきでしょう。喉頭癌の再発を予防する上で、禁煙・禁酒(または節酒)は必須と考えてください。
喉頭癌が再発した可能性をうかがわせる兆候・症状として、頸部リンパ節の腫れがあります。医師による触診のほか、患者本人による違和感でも気付くことがあります。ほかにも、自分で次のような症状を自覚した場合には、再発の可能性があります。
喉頭癌の治療後、これらのような症状が見られた場合には、再発の可能性が疑われます。速やかに医療機関を受診しましょう。定期的な診察・検査を受けることが早期発見につながります。
喉頭癌の再発を予防するためには、禁煙・禁酒(または節酒)が最も大事です。栄養バランスの良い食事習慣や適度な運動習慣もあわせ、積極的な再発予防に努めましょう。
喉頭癌が原発する主な原因は喫煙・飲酒であり、再発する主な原因も喫煙・飲酒です。喫煙・飲酒は他の多くの癌にも関与しているとされますが、特に喉頭癌への関与の度合は非常に高いことが分かっているため、再発予防に向けて禁煙・禁酒(または節酒)することが極めて重要です。
自分の意志で禁煙・禁酒することが難しい場合には、早めに禁煙外来や専門機関を受診して専門的な治療を受けるよう強く推奨します。
過食や極端なダイエット等を避け、主食・主菜・副菜をそろえ、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。野菜や果物を積極的に摂取することや減塩メニューなども癌の再発予防に良いとされています。ただし、特定の食品が再発を予防するという科学的根拠は現在のところありません。
身体活動量が多い人ほど、一部の癌の発症リスクが低いという報告があります。過度な身体的負担を伴う運動を行う必要はありませんが、喉頭癌再発予防や全身の健康維持のため、適度な運動を習慣化することは大切です。
これらの生活習慣とあわせ、医師の指示に従い定期的に口腔内の検診を受けることも大切。定期検診を通じ、適切に医師のフォローアップを受けるよう心がけましょう。
セルフチェック等により喉頭癌の再発が疑われた場合には、速やかに医師へ相談して精密検査を受けましょう。
検査の結果、もし再発と診断された場合には、改めて適切な治療を受ける流れとなります。
治療方法は、外科療法(手術)、放射線治療、薬物療法(化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)の組み合わせです。再発した癌の部位や進捗状況、過去の治療内容、患者本人の健康状態、臓器の機能(音声、嚥下、呼吸)温存の希望、医療機関の治療方針、患者の考え方などを総合的に検討した上で適切な治療法を選択します。近年では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しい薬物療法も再発・転移がんの治療選択肢となっています。
仮に喉頭癌の再発が見つかっても、早期発見であれば再び治療により治癒を目指すことが可能です。
ただし、もし発見が遅れて進行した状態で再発した場合、もちろん治癒を諦める必要はありませんが、患者の精神的なストレスや不安は大きくなる可能性があるでしょう。また、治療に伴う声の変化や喪失、飲み込みにくさ(嚥下障害)などの後遺症が生活の質(QOL)に影響することもあります。患者の治療への意欲を支え、QOLを維持・向上させるためにも、周囲の人は患者に対して様々なフォローを検討してみる必要があります。
フォローの具体的な例としては、専門家(臨床心理士など)のカウンセリングやがん相談支援センター、患者会やピアサポートグループの活用、趣味のサークル活動への参加など。気分転換として、家族で楽しく旅行をしてみても良いでしょう。喉頭摘出後の代替音声の習得(食道発声、シャント発声、電気喉頭)や嚥下リハビリテーションなど、専門的なサポートも重要です。
ただし、無理に患者を勇気づけようとすると、かえって患者に気を使わせてしまう恐れもあります。患者の性格や普段のライフスタイルなども考慮し、適切な距離感で寄り添うよう心がけましょう。
当ページでは、喉頭癌の再発に関するポイントを解説しました。
喉頭癌の再発率は、早期であれば10~20%ほど、進行癌であれば20~40%ほどと報告されています。再発する場合、治療から2年以内のタイミングが多いとされています。
再発を予防するためには、禁煙・禁酒(または節酒)を行うとともに、栄養バランスの良い食事習慣や適度な運動などが大切です。医療機関での定期検診も必ず受診し、再発の早期発見に努めましょう。
なお喉頭癌は、他の癌に比べ、比較的治癒率は高いと考えられています。仮に再発しても、早期発見できれば声などの機能を温存したまま治癒を目指すことも可能です。
もちろん再発しないに越したことはありませんが、もし再発したとしても極度に落胆する必要はありません。医師や医療スタッフを信頼し、納得のいく治療法を選択し、しっかりと治療を進めていきましょう。