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腎臓癌

掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。

腎臓癌の5年生存率(2011-2013年診断症例)と10年生存率(2005-2008年診断症例)

5年生存率

10年生存率

参照元:全国がんセンター協議会(全がん協加盟施設の生存率協同調査)/全がん協生存率

腎臓癌が転移しやすい箇所

腎臓癌

腎臓癌は全身の各部位へ転移する可能性があるとされていますが、特に腎臓癌の転移リスクがある部位は肺であるとされています。また、肺の他にも骨や脳へ癌細胞が転移する可能性があり、転移先や進行度によって現れる症状にも違いが生じる傾向にあります。

国立がん研究センターによる「がん情報サービス」によれば、転移によって現れる症状として以下のようなものが挙げられています。

転移に伴う症状としては、肺への転移では、胸の痛み・咳・血痰(けったん)・黄疸など、骨への転移では、骨の痛み・骨折など、脳への転移では、頭痛・片側の運動麻痺(まひ)などがみられます。また、がんが全身へ広がる(転移する)のに伴って、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状があらわれます。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html)

なお、癌が転移・再発した場合の治療としては、癌の状態や患者の心身の症状に合わせて複数のプランが検討されるため、まずは転移癌や再発の状況を正確に診断してもらうことが重要です。

腎臓癌はどのような癌か

腎臓癌は、腎臓に発生する癌のうち、腎実質の腎細胞が癌化して発症する癌をいいます。腎臓にある「腎盂」という部分に発生した癌は腎盂癌と呼ばれ、腎細胞癌とは区別されます。

腎臓癌の主な症状

腎臓癌は初期の頃は症状があまりなく、進行するに連れて様々な症状がみられてきます。特徴的な症状としては血尿、腹部のしこり、背中や脇腹の痛み、食欲不振、貧血などが挙げられます。

腎臓癌が再発しやすい理由・しにくい理由

癌治療において再発を予防するための最大の対策は、とにかく癌細胞を体内から全て除去することにあります。もしも手術によって癌組織を取り除いたとしても、微小な癌細胞が残存し、それらが血液やリンパ液の流れに乗って他の臓器へ移動してしまえば、再発癌として復活するリスクが生じます。

腎臓癌の再発リスクは、根治的治療として腎臓を手術で摘出したとしても、およそ20~30%と言われています。

また、再発リスクの低下を主目的とした術後の薬物療法は、効果に関する医学的根拠が不足している上、副作用リスクを考え推奨されていません

なお、再発予防を目的として手術後に薬物療法を行うことは、現時点ではその効果が明確ではなく、重篤な副作用の報告もあることから、推奨されていません。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html)

腎臓癌に用いられる治療法

腎臓癌の治療法としては、根治的治療として手術による腎摘除の他にも、局所療法や放射線治療、薬物療法など、様々なものが考案されており、癌の進行度や規模、患者の状態などを総合的に検討した上で、最適と思われるものが選択されます。

また、高齢者や他の病気を抱えている患者で、即座の治療が難しいと考えられる場合は、定期的な検査を繰り返しながら癌の状態を詳細に観察する「監視療法」が選択されることもあります。

参照元:国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html)

外科治療(手術)

腎臓癌の治療法として、外科手術によって腎臓を摘出する腎摘除術が長らく標準治療の1つとされてきました。ただし、画像診断技術が進歩して癌を早期発見できるケースも増えてきたため、近年は腎臓の部分切除のみを行うケースも少なくありません

また、腎臓の全部・一部を摘出する場合、開腹手術や腹腔鏡下手術が選択され、さらに腎部分切除術については手術用ロボットをリモート操作する「ロボット支援手術」も検討されます。

腎部分切除術(腎機能温存手術)

癌細胞を取り除きながら、腎臓を可能な限り温存するために採用される術式です。必要な部分のみを切除するだけで済む場合、長期的な健康への影響を考えてもメリットがあり、術後の合併症リスクを低下させられるという点も重要です。

ただし、癌の位置によっては部分切除が行えない他、基本的に4cm以下の腎臓癌でしか選択することができません。

腎摘除術(根治的腎摘除術)

癌細胞に侵食された腎臓をまるごと摘出する手術です。副腎まで合わせて切除するかどうかは、癌の位置や大きさ、副腎への転移の有無などを総合的に判断されます。

なお、癌が周囲の臓器へ転移している場合、他臓器も合わせて手術で切除する可能性があります。

ロボット支援手術

腎臓の部分摘出を行う場合で、さらに必要な医療設備が整っている環境において、執刀医が遠隔操作で手術用ロボットを操作する「ロボット支援手術」が選択されることもあります。

ロボット支援手術では、執刀医のいる場所と患者のいる手術室がネットワークによって結ばれ、お互いの距離に影響されず精密な治療が可能です。これにより、治療のために遠方への移動が難しい人や、高難度の手術に対応できる医師がすぐ近くにいない場合でも、外科治療の成功率を高められることに期待できます。

ただし、全ての医療機関で実施できる治療でなく、ロボット支援手術が適用かどうかも主治医や執刀医らと詳しく相談することが必要です。

日本では前立腺がんに対してロボット支援前立腺全摘除術が2012年4月より健康保険の対象となっており、2016年4月より腎がんに対する部分切除が保険適用となりました。

引用元:順天堂大学医学部付属順天堂医院泌尿器科|ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ)(https://juntendo-urology.jp/treatment/robot/)

術後の合併症リスク

通常、腎臓は体内に左右1つずつが備わっており、1つの腎臓のみを摘出しても、残った腎臓がその機能を補ってくれるので、日常生活に支障はでません。ただし、残った腎臓の機能が低下したり喪失されたりした時点で深刻なリスクを生じさせるため、人工透析による治療が実施されます。

局所療法

一部の医療機関において、選択的に採用されることのある治療法です。また、腎臓癌の局所療法は外科手術と併用されることもあります。

動脈塞栓術

癌細胞の成長にも、通常の細胞と同じように血管からの栄養供給が必要です。そのため、腎動脈を人工的に閉塞させることで、癌細胞への血液供給を阻害します。そのままでは癌の摘出ができないような場合、癌摘除術に先立って行われることもあるでしょう。治療後に一時的な発熱や痛みを生じるリスクがあります。

経皮的局所療法

特に小規模の癌であれば、癌組織へ刺した針からアルゴンガスを注入して癌細胞を凍らせる「経皮的凍結療法」や、高周波電流によって癌細胞を熱で死滅させる「ラジオ波焼灼術(RFA)」があります。

経皮的局所療法は通常、CT検査や超音波検査といった検査で状態を確認しながら実施され、手術を行えないようなケースに対して選択されることがあるようです。ただし、RFAは現在(2021年3月時点)腎臓癌に対する保険適用が認められていません。

放射線治療

高エネルギーのX線を照射して、癌細胞を死滅させる治療法です。腎臓癌において、放射線治療による治療効果はあまり高くないとされており、根治的治療として選択されるケースは多くありません。

ただし、骨や脳へ転移している場合や緩和ケアの一環として、放射線治療が選択されることはあります。

腎臓にあるがんへの放射線治療は有用性が低いとされており、腎細胞がんそのものに対しては、根治的な治療を目的として放射線治療を行うことはあまりありません。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html)

薬物療法

腎臓癌の治療に用いられる薬物療法としては、免疫療法と分子標的治療の2種類があります。

従来の腎臓癌の標準治療としては、免疫療法の一種であるサイトカイン療法が選択されていましたが、現在は初回治療(1次治療)として分子標的治療が標準治療とされていることもポイントです。

実際にどのような薬剤を用いるかは、主治医が癌や患者の状態を詳しく診断した上で、患者と相談しながら選択されます。

分子標的治療

分子標的治療は腎臓癌の標準治療の1つです。分子標的治療は腎臓癌や、転移によって再発した癌を外科手術で取り除く前段階として、癌の大きさを縮小させるために行われることがあり、治療に伴う副作用は使用する薬剤によって異なります。

使用する薬剤の例としては以下のようなものがあり、それぞれの効果や副作用リスクは治療開始前に確認しておきましょう。

使用する薬剤は、スニチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、テムシロリムス、エベロリムスです。1次治療だけでなく、2次治療、3次治療でも選択されます。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html)

免疫療法

免疫療法とは、人体の免疫機能に作用させる治療法です。進行性の腎臓癌において選択されることがあり、免疫療法にはサイトカイン療法や免疫チェックポイント阻害剤による薬物療法などがあります。

サイトカイン療法は、1次治療で分子標的治療が適応しない場合に選択されることがあります。副作用については個人差も大きく、発熱や倦怠感、食欲不振や脱毛、さらには頭痛や嘔吐といった様々なものがあり、治療効果を確認しながら適切に対処していかなければなりません。

免疫抑制阻害療法(免疫チェックポイント阻害剤)

体内では通常、免疫細胞が体外から侵入した異物や、体内で発生した癌細胞などを処理し、体の健康状態をキープしています。しかし、癌細胞には免疫機能から逃れる働きもあるとされており、免疫細胞によって癌細胞の成長を止めることができなくなれば自然治癒による回復も困難です。

免疫抑制阻害療法(免疫チェックポイント阻害剤)とは、癌細胞が免疫システムを回避する仕組みそのものを阻害する治療法であり、薬剤として「ニボルマブ」が一般的です。

ただし、ニボルマブを投与するタイミングについては統一見解がなく(2021年3月時点)、さらに副作用リスクに関しても個人差が大きいため、実際のニボルマブ使用では主治医としっかり相談した上で治療計画を立てることが大切です。

参照元:国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html)

緩和ケア

外科手術などによる根治的治療が困難であったり、副作用の辛さと引き換えに治療効果を目指すよりも、落ち着いた状態で生活することを希望したりする場合、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:人生の質)を向上させるための緩和ケアが選択されることもあります。

緩和ケアでは苦痛の軽減を主目的として、他にも患者のニーズに応じた幅広い治療プランが実施されます。

腎臓癌の検査

腎臓癌の検査としてはCT検査やMRI検査、超音波検査など複数の検査が採用されており、検査の種類によって診断される結果や患者への影響が異なることもポイントです。

参照元:国立がん研究センター がん情報サービス 腎細胞がん 検査(https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/diagnosis.html)

CT検査

静脈から造影剤を注入して体内の様子を撮影するCT検査は、腎臓癌の検査として一般的です。また、肺への転移を確かめるために胸部撮影が併用されることもあります。

超音波(エコー)検査

超音波を体表面に照射し、体内から反響してきた音を画像へ変換することで、臓器の様子を診断する検査です。腎臓癌などの疑いが発見されることもありますが、腎臓癌の確定にはCT検査やMRI検査が必要です。

MRI検査

磁気を使って癌のサイズや状態、周囲への転移の有無などを確認します。CT検査の造影剤にアレルギーがある人でも利用することができます。ただし、体にタトゥー・刺青がある人では、場合によってタトゥー部分に炎症や熱傷が生じるといったリスクもあります。そのため、タトゥー・刺青を入れている方は、事前に主治医や検査技師と細かく相談するようにしてください。

生検

体に細い針を刺して癌組織の一部を採取し、癌細胞を顕微鏡下で調べる検査方法です。CT検査やMRI検査といった画像診断だけで細胞の悪性度や状態が判断できない場合、生検によってより正確な分析が行われます。

骨シンチグラフィ

骨痛の強度や血液検査の結果などを総合的に診断して、骨への転移の有無を調べる検査です。骨に転移しやすい腎臓癌では重要な検査といえるでしょう。

PET検査(陽電子放出断層撮影法)

PET検査は放射線を発する微少な検査薬を体へ投与して、それがどのように体内へ分布しているのか確認する検査です。

癌細胞は通常の細胞よりも多くのブドウ糖を消費するという特性を利用し、癌検査では特殊なブドウ糖検査薬を活用して、ブドウ糖が特定の組織に集中していないかどうかを確かめます。

血液検査・腫瘍マーカー検査

腎臓癌の患者では、血中成分にも様々な影響が与えられるため、血液検査によって腎臓癌の疑いを発見できる場合があります。

また、血液検査の発展系として、癌細胞がある場合に生産される物質の有無や量を分析し、体内に癌が発生しているかどうかを調べる腫瘍マーカー検査も一般的な検査法です。

腎臓癌を再発させないための予防法

腎臓癌を再発させないためには生活習慣の改善が大切です。特に喫煙や肥満、高血圧は癌の腎臓癌のリスクを高めるともいわれており、注意が必要です。また適度な運動を行う事により、生活習慣の改善やストレス発散の効果も期待できるため、運動も予防には有効といわれます。

その他にも、治療としては術後補助療法として薬物治療や放射線治療が有効です。手術後などに残っている可能性のある癌細胞に対してさらなる治療をすれば、再発のリスクを大幅に減らせます。

癌が再発した場合は、癌治療専門病院へ行き、早めに適切な治療をする事が重要です。

腎臓癌のステージ

ステージ分類

Ⅰ期 癌の大きさが7cm以下で腎臓内に留まっている状態。
Ⅱ期 癌の大きさが7cm以上で腎臓内に留まっている状態。
Ⅲ期 癌が腎臓を超えて周囲の脂肪組織や上下の大動脈にまで広がっているが、リンパ節への転移は見られない状態。あるいは癌が腎臓内に留まっているもののリンパ節への転移が1個見られる状態。
Ⅳ期 リンパ節への転移の有無に関係なく、癌が腎臓を覆う一番外側の組織「Gerota筋膜」を超えて広がっている状態。あるいは癌の大きさや浸潤度に関係なく、リンパ節に2個以上の転移が認められる場合や他の臓器にまで転移している場合。

ステージの分類方法

腎臓癌のステージ分類には、国際規格である「TNM分類」が用いられています。

T=原発腫瘍の大きさと浸潤度

腎臓に発生した癌がどれ程の大きさに成長しているか、どの程度広がっているかを表します。T1とT2は癌が腎臓内に留まっている状態、T3は癌が腎臓周辺組織にまで進展しているもののGerota筋膜は超えていない状態、T4は癌が同じ側の副腎、あるいはGerota筋膜を超えている状態です。

N=所属リンパ節への転移の有無

癌の大きさや浸潤度とは関係なく、リンパ節に転移しているかどうかを表します。N0は転移していない状態、N1は1個の転移が見られる状態、N2は2個以上の転移が見られる状態です。

M=遠隔転移の有無

腎臓から離れた臓器に転移しているかどうかを表すもので、M0は遠隔転移なし、M1は遠隔転移ありです。

ステージごとの治療方針

Ⅰ~Ⅱ期

癌が4cm以下でリンパ節への転移も見られない場合には、腎部分切除で癌だけを取り除きます。一方で「癌が大きい」「部分切除では対応しきれない」などと判断された場合には腎摘除が行われます。ただ、部分切除であれば治療後に腎機能が低下して慢性腎臓病になる確率は低いため、可能な限りは部分切除が勧められているのです。

Ⅲ期

癌の大きさが7cm以上ともなると部分切除では対応できないため、腎摘除が行われます。再発防止のために周囲の脂肪も取り除き、リンパ節への転移が見られる場合にはリンパ節郭清(癌の周りにあるリンパ節の切除)も行われます。可能な限り、腎摘除も腹腔鏡下手術で行いますが、それが難しい場合には開腹手術となります。

Ⅳ期

遠隔転移が見られない場合には腎摘除が行われ、この際に浸潤している部分も一緒に切除します。転移が見られる場合でも可能なら摘除し、可能であれば転移したところ(転移巣)も切除することになるでしょう。

しかし、転移巣は残った場合やそもそも手術は不可能と判断された場合には、放射線療法や薬物療法で癌の進行を遅らせます。