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甲状腺癌

甲状腺癌について解説していきます。

甲状腺癌の5年生存率・10年生存率

5年相対生存率(2011-2013年診断症例)

10年相対生存率(2005-2008年診断症例)

甲状腺癌が転移しやすい箇所

甲状腺癌は局所の再発や甲状腺周囲のリンパ節への転移が多くみられる一方、肺や骨、肝臓など他の臓器への転移は稀といわれています。

甲状腺癌はどのような癌か

甲状腺とは、喉にある重さ10〜20g程度の小さな臓器で甲状腺ホルモンという全身の新陳代謝や成長の促進に関わるホルモンを分泌している臓器。

甲状腺癌はその甲状腺に発生する癌です。病理組織診断から主に「乳頭癌」「濾胞癌」「髄様癌」未分化癌の4つに分けることができます。

甲状腺癌の主な症状

甲状腺癌では初期ではほとんど症状はみられません。

最初の症候として、甲状腺部にしこりが出現して気づくことが多いようです。

他には喉の違和感・痛み・飲み込みにくさ・声のかすれ・血痰などの症状がみられます。

甲状腺癌が再発しやすい理由・しにくい理由

甲状腺癌は最初の治療で癌細胞が完全に取り除かれた場合は再発する事はありません。

しかし目に見えない僅かな癌細胞が残っていたり、他の部位への転移があった場合には、その癌細胞が増殖して再発を起こします。

甲状腺癌は10年生存率も比較的高く、再発や転移はしにくいといわれています。

甲状腺癌に用いられる治療法

甲状腺癌が再発した場合、局所の再発で切除可能であれば根治を目指し、外科手術にて癌細胞を取り除きます。

外科手術は進行度によって甲状腺を半分切除する半葉切除、甲状腺癌を全て切除する全摘出術か選択されます。

外科手術では根治が望めない場合や他の部位に遠隔転移が見られる場合は放射線治療や抗がん剤治療が選択されます。

再発しないための予防法

甲状腺癌の再発を予防するためには生活習慣の改善が有効といわれています。禁煙や適度な運動、塩分・アルコールを過剰摂取しない事、ストレスを溜めないことは、癌の予防に重要です。

また術後補助療法は癌再発のリスクを減少させる目的で行われます。

癌が再発した場合は、癌治療専門病院へ行き、早めに適切な治療を行う事が重要です。

手術(外科治療)

甲状腺癌における手術には、甲状腺を全て摘出する全摘術と、甲状腺のおよそ3分の2超を摘出する亜全摘術、そして左右一対のような形状をしている甲状腺の片側のみを切除する葉切除術などがあります。また、葉切除術の場合、必要に応じて甲状腺の中央部分(峡部)も同時に切除する葉峡部切除術もあります。

どのような手術方法を採用するかは、癌の大きさや転移の状態などによって主治医と相談するようにしなければなりません。

また、甲状腺を手術によって摘出することで、甲状腺ホルモンが分泌されなくなるといったリスクもあります。そのため、術後の合併症を予防する観点からも甲状腺の摘出範囲を考慮することが必要です。

甲状腺をすべて摘出すると、甲状腺ホルモンが分泌されなくなります。甲状腺機能の温存と合併症を軽減するため、がんの状態によって、再発のリスクが低いと考えられる場合には、全摘術ではなく、葉切除術を行うことを検討します。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html)

なお、気管側面にあるリンパ節へ転移が疑われた場合、気管周囲郭清が行われ、頸部リンパ節への転移が認められれば頸部リンパ節全体を切除します(頸部郭清)。さらに必要性があれば、縦隔の上寄り部分に関しても切除する上縦隔郭清が選択されることもあるでしょう。

甲状腺癌の外科治療は癌の転移状況によって内容が変更されるため、事前の精密検査の結果を慎重に判断することが重要です。

反回神経の再建

甲状腺を摘出する場合、声帯の運動を司っている反回神経について、可能な限り温存するように試みられます。しかし、状態によっては反回神経に腫瘍が影響しており、温存することが難しいケースもあるでしょう。

反回神経を切除すると発語障害や誤嚥(ごえん)のリスクが増大するため、基本的には反回神経の再建が試みられます。たとえ声帯の運動を回復させることが困難であっても、声帯の萎縮を予防できれば、音声の改善や誤嚥予防の効果を得ることが可能です。

術後合併症

甲状腺を摘出した場合、切除範囲に応じて甲状腺ホルモンの分泌量が低下したり、副甲状腺機能が低下したりといった術後合併症が生じます。そのため、術後はそれらの合併症リスクを低減させるために、投薬治療などを行わなければなりません。

手術後の合併症とは、手術後の好ましくない症状や状態のことをいいます。甲状腺がんの手術では、切除範囲が大きいほど、甲状腺機能の低下(甲状腺ホルモンの分泌不足)、副甲状腺機能の低下(血液中のカルシウムの不足)、反回神経の麻痺(声のかすれ)などの合併症のリスクが高くなります。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html)

甲状腺・副甲状腺の機能低下

摘出手術によって甲状腺が減少すると、甲状腺の機能が低下して甲状腺ホルモンの分泌量も不足します。その結果、新陳代謝が悪くなって、倦怠感や食欲低下、疲労感といった様々な症状が現れやすくなるでしょう。

一般的に、甲状腺が半分以上温存されているのであれば、術後に特別な治療を行う必要がないとされます。しかし、全摘術や亜全摘術の場合、甲状腺の大部分が切除されてしまうため、術後はずっと甲状腺ホルモン薬を服薬しなければなりません。当然ながら切除された甲状腺の組織や機能は自然に回復しないため、この投薬治療は基本的に一生涯にわたって続ける必要があります。

また、副甲状腺機能が低下すると、血液中のカルシウム濃度が低下してしまいます。カルシウム濃度が低下すると、手足のしびれが生じることもあり、低カルシウム血症を起こさないよう症状に合わせてビタミンD製剤やカルシウム剤が処方されます。

甲状腺ホルモン薬やカルシウム補充薬について副作用はほとんどないとされていますが、気になる自覚症状などがあれば速やかに主治医へ相談することが大切です。

反回神経の麻痺

手術の影響で反回神経が麻痺すれば、声がかすれるといった合併症を引き起こします。ただし、反回神経の麻痺によって一時的に声がかすれた場合でも、反回神経が温存されていればおよそ半年以内に症状は回復するとされています。

放射線治療

放射線治療は、X線などの放射線を癌細胞へ照射して癌を小さくする治療法です。甲状腺癌治療における放射線の照射方法としては、体外から照射する外照射と、体内から照射する内照射の2つがあります。

内照射治療(放射性ヨード内用療法)

乳頭癌や濾胞癌などの甲状腺分化癌については、甲状腺を全摘出した後で内照射(放射性ヨード内用療法)を実施する場合があります。

放射性ヨード内用療法

通常、手術によって甲状腺を全て摘出したと思っても、1つ残らず甲状腺組織を除外することはできません。そのため、そのまま放置すれば癌の再発や転移といったリスクが上昇します。

そこで、甲状腺全摘術によって取り除けなかった癌細胞に対して、放射性ヨード「I-131」のカプセルを飲み、体の中から放射線を照射する内照射が採用されます。また、癌が遠隔転移しており手術で切除できない場合、「I-131」の用量を増やした放射性ヨード大量療法が選択されることもあるでしょう。

なお、放射性ヨード内用療法を実施すると、一定期間は患者の唾液や尿、汗などから放射性物質である放射性ヨードが排出され、周囲の人が放射線に被曝する可能性が生じます。そのため、放射性ヨード内用療法を行ってから数日間は特別な病棟へ入院するといった対処を行わなければなりません。

入院治療の場合は、カプセルをのんだ後3日間は周りの人の被ばくを避けるため、アイソトープ病室に入院します。外来治療を希望する場合は、家族に小児または妊婦が同居していないことや、できるだけ公共交通機関を使わずに帰宅できることなどの、一定の条件があります。担当医に相談しましょう。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html)

放射性ヨード内用療法の治療スケジュールと副作用

I-131カプセルを1回服用し、その後は6ヶ月~1年ほどの期間を経て効果を確認します。効果が認められなかった場合、改めてI-131カプセルを服用して検査といったことを繰り返します。

また、カプセルを飲む場合、甲状腺ホルモン薬の服用を事前に中止したり、ヨードを含む医薬品や食事を制限したりと、色々な注意事項があるため主治医と詳細を確認しておきましょう。

カプセルをのむ日(治療日)の4週間前から、甲状腺ホルモン薬は中止します。また、治療日の2週間前から、ヨードを含む医薬品は中止し、ヨードを含む食事(海藻類、貝類、赤身の魚、寒天を使用した食品など)も制限する必要があります。カプセルをのんでから3日後までは、ヨードの摂取の制限が必要です。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html)

放射性ヨード内用療法の副作用としては、カプセルを飲んだ日から数日以内に発生する急性期のものと、それ以降に現れる後期のものと、大きく2種類があります。

急性期の副作用としては、唾液腺の炎症で食事中に痛くなったり、味覚障害が起きたり、または口内が乾燥することもあります。一方、後期の副作用としては、唾液腺障害や涙腺障害による口・目の粘膜の乾燥、そして不妊などがあり、特に妊娠を計画している人は事前に主治医へ相談することが必要です。なお、生殖腺への被爆を減らすには、水分を多めに摂取して排尿回数を増やし、放射性ヨードの排出を促すことが有効だとされています。

女性では、一時的な性周期の異常が見られることがあり、治療後1年間は避妊をすることが望ましいです。

男性では、治療後3〜6カ月以内に精子数の減少などがみられ、精巣機能の回復までには3年程度を要する場合があります。

病状が安定している場合には、先に子どもをもうけ、その後治療を行うこともあります。将来子どもをもつことを希望している場合には、早めに医師に相談しましょう。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html)

外照射治療

癌の種類や状態によっては、体外から放射線を照射する外照射を実施します。

なお、外照射の副作用としては口内炎や咽頭炎といった粘膜の炎症、喉の痛み、嚥下障害といったものがあります。また、食欲低下や白血球の減少といった副作用もあり、症状の程度を確認しながら治療を進めることが大切です。

薬物療法

甲状腺癌治療における薬物療法としては、内分泌療法や分子標的療法、化学療法(抗がん剤治療)などがあります。

内分泌療法(ホルモン補充療法/TSH抑制療法)

甲状腺の摘出で甲状腺ホルモンの分泌量が低下すると、脳は甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌量を増やして甲状腺の機能を活性化させようとします。しかし、TSHは癌細胞にも作用することが知られているため、薬剤によって不足した甲状腺ホルモンを補ったり、TSHの働きを抑制したりといった治療が必要です。

分子標的療法

手術による治療が困難で、放射性ヨード内用療法でも効果が認められない場合、分子標的薬を使った分子標的療法が選択されることもあります。ただし、分子標的薬には副作用のリスクが大きいものもあり、治療プランの構築には主治医としっかり相談しなければなりません。

甲状腺分化がんではレンバチニブとソラフェニブを、髄様がんではバンデタニブ、レンバチニブ、ソラフェニブを用いることがあります。

未分化がんでは、手術が困難な場合にレンバチニブを用いることがあります。

いずれも血管新生阻害剤といわれる薬剤で、腫瘍が大動脈に浸潤あるいは皮膚、食道、気管支に浸潤していると出血・瘻孔(ろうこう)形成のリスクがあり、服用のメリットよりもデメリットが大きいことがあります。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html)

化学療法(抗がん剤治療)

悪性リンパ腫や未分化癌で、他の治療の効果が期待できない場合、細胞障害性抗がん剤を複数組み合わせた化学療法が選択されることもあります。

ただし、甲状腺癌の治療では手術や放射性ヨード内用療法が先に検討され、化学療法が第一の選択とされることはあまりありません。

使用する薬剤は、ドキソルビシンやパクリタキセルなどですが、2018年7月現在、甲状腺がんでは保険適用外です。

乳頭がんや濾胞がんでは手術の効果があらわれやすいこともあり、化学療法はあまり行われませんが、放射性ヨード内用療法が無効な場合に検討することがあります。

引用元:国立がん研究センター がん情報サービス 甲状腺がん 治療(https://ganjoho.jp/public/cancer/thyroid/treatment.html)

甲状腺癌のステージ

ここでは、ステージごとの甲状腺癌の状態について解説します。

ステージ分類

乳頭癌、濾胞癌のステージ

乳頭癌・濾胞癌(ろほうがん)のステージ分類は、患者さんの年齢によって異なります。

患者さんが55歳未満の場合は、遠くの臓器への転移がない場合をⅠ期、転移が見られる場合をⅡ期に分類します。55歳以上の患者さんのステージ分類については、以下の表を参考にしてください。

Ⅰ期 癌の大きさが2cm以下で、甲状腺の内側に留まっており、かつリンパ節や遠くの臓器への転移がない状態です。
Ⅱ期 大きさ4cm以上の癌が、甲状腺の内側に留まっている状態です。また、癌が首の前面にある筋肉(前頸筋群)にのみ広がっている場合や、甲状腺内~前頸筋群までの癌が領域リンパ節に転移している場合も、このステージに分類されます。
Ⅲ期 癌が甲状腺を越えて、皮下軟部組織、喉頭、食道、気管、甲状腺の後ろ側にある反回神経のいずれかに広がっている状態です。なお、リンパ節への転移の有無は問いません。
ⅣA期 癌が甲状腺の外にある組織(左右の肺の間にある血管など)に広がっているか、癌が頸動脈全体を取り囲んでいる状態です。前述の条件に該当する場合は、領域リンパ節への転移があってもなくても、このステージに分類されます。
ⅣB期 癌が甲状腺から遠くにある臓器に転移している状態です。なお、癌の大きさや浸潤の度合いは問いません。

髄様癌(ろほうがん)のステージ

乳頭癌・濾胞癌の場合とは異なり、髄様癌のステージ分類は年齢に左右されることはありません。

Ⅰ期 癌の大きさが2cm以下で、甲状腺の内側に留まっており、かつリンパ節や遠くの臓器への転移がない状態です。
Ⅱ期 大きさ2cm以上の癌が、甲状腺の内側に留まっている状態です。また、癌が首の前面にある筋肉(前頸筋群)にのみ広がっている場合も、このステージに分類されます。
Ⅲ期 甲状腺の内側、あるいは前頸筋群にのみ広がっている癌が、甲状腺周囲のリンパ節に転移している状態です。
ⅣA期 癌が甲状腺を越えて、皮下軟部組織、喉頭、食道、気管、甲状腺の後ろ側にある反回神経のいずれかに広がっている状態です。この場合、リンパ節への転移の状況は問いません。
また、Ⅲ期までの大きさの癌が甲状腺の周り以外のリンパ節に転移している場合も、ステージはⅣAに分類されます。
ⅣB期 癌が甲状腺の外にある組織(左右の肺の間にある血管など)に広がっているか、癌が頸動脈全体を取り囲んでいる状態です。
ⅣC期 癌が骨や肺など、甲状腺から遠くにある臓器に転移している状態です。

未分化癌のステージ

未分化癌のステージは、ⅣA~ⅣCの3段階に分類されます。

ⅣA期 癌が甲状腺の内側に留まっており、かつリンパ節や遠くの臓器への転移がない状態です。
ⅣB期 甲状腺内の癌が、リンパ節に転移している状態です。
また、癌が前頸筋群にのみ浸潤している場合や、皮下軟部組織・喉頭・気管・食道・反回神経のいずれかに浸潤している場合、癌が頸動脈を取り囲んでいる場合、肺に囲まれた血管や椎前筋膜に広がっている場合にも、このステージに分類されます。
ⅣC期 癌が骨や肺などの遠くの臓器に転移している状態です。
ⅣA期 癌が甲状腺の外にある組織(左右の肺の間にある血管など)に広がっているか、癌が頸動脈全体を取り囲んでいる状態です。前述の条件に該当する場合は、領域リンパ節への転移があってもなくても、このステージに分類されます。
ⅣB期 癌が甲状腺から遠くにある臓器に転移している状態です。なお、癌の大きさや浸潤の度合いは問いません。

ステージの分類方法

甲状腺癌のステージは、「癌の大きさや浸潤の程度」「リンパ節への転移の状況」「他の臓器への転移の有無」の3つの指標に基づいて分類されます。

なお、乳頭癌および濾胞癌の場合は、患者さんの年齢によっても分類方法が変わります。患者さんが55歳以上の場合は前述の3つの要素を組み合わせてステージの判断を行いますが、55歳未満の場合は、他の臓器への転移の有無のみに基づいてステージを分類するのです。

ステージごとの治療方針

乳頭癌、濾胞癌の場合

どのステージでも、基本的には手術によって治療を行います。手術の後には、放射性ヨードを内服することで体の内側から甲状腺組織に放射線を浴びせるアブレーション治療を行うことも。

また、遠隔転移のあるⅣ期の癌に対しては、放射性ヨードを大量に投与する治療が行われることもあります。

髄様癌の場合

どのステージでも、基本的には手術によって甲状腺を全摘します。場合によっては、首のリンパ節や脂肪組織などを広範囲にわたって取り除く頸部郭清(けいぶかくせい)を行うことも。

また、再発した癌である場合や、他の臓器への転移が見られる場合には、癌を攻撃する分子標的薬を用いた治療が行われることもあります。

未分化癌の場合

ⅣAおよびⅣB期で、かつ手術が可能である場合には、手術によって甲状腺を取り除きます。また、その後は補助療法として、放射線や薬物もしくはその両方による治療を行います。

手術が困難な場合や、ⅣC期の患者さんに対しては、放射線治療や化学療法といった手術以外の手段を組み合わせた集学的治療を行います。