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掲載している治療法は保険適用外の自由診療も含まれます。自由診療は全額自己負担となります。症状・治療法・クリニックにより、費用や治療回数・期間は変動しますので、詳しくは直接クリニックへご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なりますので、不安な点については、各クリニックの医師に直接確認・相談してから治療を検討することをおすすめします。
参照元:全国がんセンター協議会(全がん協加盟施設の生存率協同調査)/全がん協生存率
他の臓器の癌細胞が乳房に転移することはごくまれですが、乳癌から他の部位に転移するケースが多い傾向にあります。特に多いのは乳房の周辺のリンパ節、中でも癌と同じ側のわきの下のリンパ節に最初に転移するパターンが多く見られます。次いで多いのが骨や皮膚への転移、進行すると肺や肝臓、脳などの離れた臓器への転移もみられます。
(以下引用)
乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉から発生します。男性にも発生することがあります。男性も、多くは女性と同様に乳管からがんが発生します。
乳がんは、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺など)に転移することがあります。
引用:国立がん研究センター がん情報サービス 乳がん 基礎知識( https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/index.html)
(以上)
このように乳癌は転移しやすいので、転移した癌がもともとの乳癌より先に見つかることも珍しくありません。ただ、乳癌が転移していてもまったく症状が現れない場合もあるため注意が必要です。
乳癌と診断された場合は、常に転移の有無を把握し、確実な治療を受ける必要があります。
乳癌が再発した場合は、局所再発か遠隔転移かによって治療法が異なります。
局所再発の場合は手術で癌を取り除き、必要に応じて薬物療法や放射線治療を行なって根治を目指します。初回治療時に放射線治療を受けている場合は、再照射が難しいケースもあるため、再発時の治療法は慎重に検討されます。
遠隔転移の場合は手術が困難なため、薬物療法(ホルモン療法、分子標的薬、抗がん剤)や放射線治療で癌の進行を抑制します。必要に応じて免疫チェックポイント阻害薬などを併用することもあります。最近ではがんゲノムプロファイリングを用いた個別化治療も選択肢となっています。
乳癌は初期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行とともにさまざまな症状が現れてきます。
もっとも特徴的な症状は乳房に生じる「しこり」です。乳癌のしこりは硬く、ゴリゴリとした感触で、触れても動きにくいのが特徴とされています。
そのほかの症状としては、乳房の皮膚にえくぼのようなくぼみが生じる「陥凹(かんおう)」、皮膚のただれ・湿疹・発赤、乳頭からの分泌物、乳頭の陥没などが挙げられます。また、腋の下や鎖骨周囲のリンパ節が腫れることもあります。
炎症性乳癌と呼ばれる特殊型では、皮膚が赤く腫れたり熱を持ったりするなど、乳腺炎と似たような症状を呈するため、見逃されやすい傾向があります。
乳癌は初期の頃では自覚症状がほとんどなく進行とともに症状が現れてきます。
特徴的な症状は乳房に生じるしこりです。乳癌のしこりは石のように固く、触ってもあまり動かないのが特徴です。
他には乳房にえくぼのようなくぼみが生じたり、皮膚に湿疹や発赤がみられたりします。また乳房に近くのリンパ節が腫れる事があり、わきの下、胸骨近く、鎖骨の上下部分に腫れが生じます。
乳癌は最初に見つかった時点で転移がなく、手術や薬物療法によって目に見える癌を完全に取り除くことができれば、再発の可能性は大きく低下します。ただし、治療後も体内にわずかに残っていた目に見えない癌細胞(微小転移)が増殖することで、再発が起こる場合があります。
再発は、乳房や胸壁、皮膚などの近くのリンパ節に生じる「局所再発」と、骨・肺・肝臓・脳など他の臓器に癌細胞が移動して起こる「遠隔転移」に分けられます。
再発のリスクは、がんの進行度(ステージ)やサブタイプ(ホルモン受容体・HER2の有無)、がんの悪性度、術後の薬物療法の有無、治療後の経過年数などによって左右されます。
たとえば、ホルモン受容体陽性タイプは再発のリスクが比較的長期間にわたり持続しやすく、術後5年を過ぎたあとに再発する「晩期再発」も起こり得ます。一方で、HER2陰性かつホルモン受容体陽性で悪性度の低い乳癌は、再発率も比較的低いとされています。
乳癌の治療は、手術で乳房全体を切除するのが標準治療とされていますが、再発までの期間が短い場合は遠隔転移を起こしている可能性もあるため、まずは全身検索を行います。その結果に基づいて治療方針を決定します。
乳房切除後も、残存皮膚や胸壁、または対側乳房に再発することがあります。もし遠隔転移がみられる場合は全身治療(薬物療法)が優先されますが、局所に限定されている場合は外科的切除と放射線治療の併用が検討されます。
初回治療で放射線治療を受けていない場合は、再発後に放射線を行って局所制御を図ります。ただし、すでに照射歴がある部位では再照射の副作用リスクを考慮し、他の治療法の選択が必要になります。
乳癌の手術後2年以内に局所再発を起こした場合は、癌の悪性度が高い傾向があるとされ、外科切除後に全身治療としてホルモン療法や化学療法が行われることが多いです。
近年では、手術で切除した再発巣を用いて、改めてホルモン受容体やHER2の状態を再評価することで、その後の治療選択に活かす「再バイオプシー」が推奨されています。
遠隔転移が見つかった場合は、他の部位にも癌細胞が広がっていると判断されるため、治療の中心は全身に作用する薬物療法となります。使用する薬剤は、乳癌の性質を表す「サブタイプ」(ホルモン受容体、HER2、PD-L1の有無など)に基づいて決定されます。
転移による症状(骨転移による痛みや脳転移など)に対しては、手術や放射線療法を行うこともありますが、いずれも根治を目的としたものではなく、症状の緩和を目的とした対症療法です。
遠隔転移に対する薬物療法は、患者の生活の質(QOL)を保ちながら、できる限り長くがんと共存することを目的としています。初回治療と異なり、根治を前提とせず、進行を抑えることが優先されます。
治療期間についても、初回治療のようにあらかじめ決まった期間ではなく、効果が続く限り治療を継続し、副作用や体調に応じて柔軟に対応していく方針がとられます。
現在では、がんゲノムプロファイリング検査を行って、治療標的となる遺伝子異常が確認された場合には、それに応じた分子標的薬や免疫療法を選択することも可能となっています。
再発癌・転移癌のサブタイプがホルモン受容体陽性の場合は、ホルモン療法から治療を開始するのが一般的です。ただし、生命にかかわるような臓器転移(肝・肺・脳など)がある場合や、がんの進行が速い場合は化学療法が優先されることもあります。
ホルモン療法で効果が期待できる場合は、その効果が続く限り治療を継続します。ただし、乳癌にはホルモン療法に耐性を獲得する性質があるため、治療を続けるうちに効果が薄れることがあります。その際は薬剤の変更を行い、効果が得られなくなった段階で化学療法へ移行します。
化学療法もホルモン療法と同様に、効果が持続する限り継続します。最終的には、積極的治療から支持療法へと移行し、生活の質をできる限り維持することを目指します。
閉経前のホルモン療法では、LH-RHアゴニスト製剤と抗エストロゲン薬タモキシフェンの併用から開始します。効果がみられなくなった場合には、LH-RHアゴニスト製剤を継続しながら、抗エストロゲン薬フルベストラントに切り替え、サイクリン依存性キナーゼ(CDK4/6)阻害薬(パルボシクリブまたはアベマシクリブ)を併用します。
さらに進行した場合や効果が減弱した場合には、化学療法へ移行します。
閉経後のホルモン療法では、抗エストロゲン薬フルベストラントやアロマターゼ阻害薬が用いられます。状況に応じて、CDK4/6阻害薬(パルボシクリブ、アベマシクリブ)を併用します。
ホルモン療法が無効になった場合には、mTOR阻害薬(エベロリムス)や抗エストロゲン薬タモキシフェン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステルなどが使用されます。近年では、PI3K阻害薬(アルペリシブ)もP13KCA遺伝子変異がある症例に対して適応が追加されています。
これらの治療法でも効果がみられなくなった際には、化学療法へ移行します。
再発癌・転移癌のサブタイプがHER2陽性の場合は、抗癌剤と併せて抗HER2薬を用いた治療が基本となります。一次治療では、トラスツズマブ(ハーセプチン)とペルツズマブを、タキサン系抗がん剤(ドセタキセルなど)と併用するレジメンが標準治療です。
薬剤に耐性ができて効果がみられなくなった場合は、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)や、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)を使用します。これらはHER2陽性乳癌において高い有効性を示しており、二次治療以降の選択肢として確立しています。
さらにその後は、チロシンキナーゼ阻害薬(ラパチニブやネラチニブ)と抗がん剤(カペシタビンなど)を併用した治療が検討されます。使用される抗がん剤には、カペシタビンのほか、ビノレルビンやエリブリンなどがあります。これらは治療効果と副作用を見ながら順次使い分けられます。
手術後の化学療法は複数の抗癌剤を同時に使用し、再発のリスクを下げることを目指します。
それに対して遠隔転移の場合の化学療法は、抗癌剤を1種類ずつ使用する単剤療法が基本となります。薬剤に耐性ができて効果がみられなくなったら別の抗癌剤に切り替え、できる限り長期間にわたって治療を続けることを目指します。
代表的な抗癌剤には、アントラサイクリン系(エピルビシンなど)やタキサン系(ドセタキセル、パクリタキセル)などがあります。これらの薬剤は、がんの増殖スピードや患者の体調、副作用の出方を見ながら順次選択されます。
ホルモン受容体、HER2ともに陰性の乳がんはトリプルネガティブと呼ばれ、ホルモン療法や抗HER2療法の適応がありません。再発や転移がみられた場合は化学療法が中心となりますが、近年は免疫チェックポイント阻害薬の登場により、治療の選択肢が広がっています。
2019年にアテゾリズマブ(PD-L1阻害薬)とnab-パクリタキセルの併用が承認されて以来、PD-L1陽性の進行トリプルネガティブ乳癌に対して免疫療法が使用されるようになりました。さらに、2021年には別の免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブも承認され、TILs(腫瘍浸潤リンパ球)やPD-L1の発現状況に応じた個別化治療が進んでいます。
免疫療法は、体に備わる免疫機能を活性化させてがん細胞を攻撃する仕組みであり、特にトリプルネガティブ乳癌のように治療選択肢が限られるタイプにおいて新たな可能性を示しています。
引用:がんの治療法 乳がんが再発・転移 どんな治療を行うの?( https://www.findme.life/contents/breast-cancer/postoperative/metastasis/)
「できるだけ早く再発を見つけられたら根治できるのではないか」と、そう考える人は多くいます。しかし、さまざまな検査を定期的に受けて遠隔転移を早期に発見し、すぐに治療したとしても、乳癌と診断されてからの全体の生存期間に変わりはないのが実情です。
血液だけで簡単に調べられる腫瘍マーカー検査が遠隔転移の発見に役立つと考える向きもありますが、腫瘍マーカーは必ずしも癌で異常値になるわけではないのです。腫瘍マーカーのチェックはあくまでも目安なので、腫瘍マーカーに異常がある場合は画像診断なども実施して再発の有無を調べる必要があります。
身体のどこかが少し痛むだけでも再発ではないかと心配になってしまう、それは無理のないことです。気になる症状があれば遠慮せず主治医に伝えてその判断に従い、必要な検査を受けてください。
とはいえ、神経質になりすぎるのも考えものです。念のため、という気持ちはわかりますが、あまりにも頻繁に検査を受け続けるのは精神的にも体力的にも、そして経済的にもおすすめできません。再発予防の治療は受けているはずですから、そこは自信を持って、心身のバランスを崩さないよう前向きな生活を心がけることが大切です。
ただし、癌が反対側の乳房にできたのであれば、早期発見が根治の可能性を高めます。乳癌の手術を受けた場合は、年1回の検診でマンモグラフィーを受けるようにしましょう。
乳癌の再発を予防するためには生活習慣の改善が有効といわれています。塩分、アルコールを過剰摂取しない事や適度運動をを行うこと、ストレスを溜めない事は癌の予防に大切な事です。
また術後補助療法は癌再発のリスクを大幅に減少させる事ができます。癌が再発した場合は、癌治療専門病院へ行き、早めに適切な治療を行う事が重要です。
0期 | 乳液の通る管である「乳管」内に癌が留まっている状態(非浸潤癌)。乳がんの始まりであり、しこりはない。 |
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Ⅰ期 | 癌が乳管を破って外に飛び出している(浸潤癌)ものの、脇の下のリンパ節にまでは達していない状態。しこりの大きさは2㎝以下。 |
Ⅱa期 | 浸潤癌が脇の下のリンパ節にまで達しているが、しこりの大きさは2㎝以下の状態。あるいは浸潤癌がまだ脇の下のリンパ節に達していないが、しこりの大きさが2~5㎝に成長している状態。 |
Ⅱb期 | 浸潤癌が脇の下のリンパ節にまで達しており、かつしこりの大きさが2~5㎝に成長している状態。 |
Ⅲa期 | しこりの大きさが5㎝以上で脇の下のリンパ節に転移が見られる状態。あるいはしこりの大きさに関わらず、脇の下のリンパ節に転移が見られ、かつ癌細胞によりリンパ節同士が癒着したり石灰化して周辺組織に固定されたりしている状態。あるいは脇の下のリンパ節転移も見られないが、胸骨の内側のリンパ節に転移が見られる状態。 |
Ⅲb期 | しこりの大きさに関係なくしこりが胸壁に固定されていたり、皮膚の浮腫みや潰瘍が見られる状態。 |
Ⅲc期 | しこりの大きさに関係なく、脇の下と胸骨の内側の両方のリンパ節に転移が見られる状態。あるいは鎖骨の周囲に転移が見られる状態。 |
Ⅳ期 | しこりの大きさやリンパ節の転移状況に関係なく、他の臓器にまで転移している状態。 |
ステージは、国際基準である「TNM分類」に沿って決められます。
乳房内で癌がどれ程広がっているか、また乳管内を飛び出して浸潤癌となっているかどうかによって判断されます。
浸潤癌がリンパの流れに乗ってリンパ節に転移すると、癌が発生した臓器から離れたリンパ節にも広がっていく可能性があります。このリンパ節への転移の度合いが判断基準です。
遠隔転移は癌がリンパ節や血液に入り込んで他の様々な臓器にまで達すること。TNM分類のMにおいては、この遠隔転移有無がポイントとなります。
癌が小さい場合には乳房温存手術も可能です。腫瘍部分を広めに見積もって摘出し、周囲の乳腺や脂肪で乳房の形を整えます。術後の薬物療法は基本的に必要ありません。
腫瘍が小さい場合には乳房温存手術が可能ですが、術後放射線療法が必要です。腫瘍が大きい場合には乳房切除術を行いますが、術前に薬物療法で腫瘍を小さくできれば乳房温存手術を行う場合もあります。
手術の際にはリンパが最初に流れ着く場所である「センチネルリンパ節」への転移がないかを調べ、転移が認められなければ手術は終了です。もし認められればその部分も周囲の脂肪と一緒に切除。術後は再発予防のために薬物療法か化学療法、分子標的治療のいずれか、あるいはそれらを組み合わせた治療が行われます。
癌が他の臓器に広がっている可能性があるため、摘出手術ではなく薬物療法がとられます。しかし、薬物療法の効果によっては摘出手術が可能になる場合も。そのケースでは乳房切除術の後に再発防止のために放射線治療が行われます。