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このページでは、子宮頸癌に対する従来の放射線治療とトモセラピー治療の違いや、トモセラピーの特徴、メリット・デメリットなどを詳しくまとめました。
子宮頸癌は、子宮癌の中でも特に、子宮の入り口に当たる「子宮頸部」に発生する癌を指します。子宮の入り口に発生するため、婦人科の検診などで発見しやすく、早期発見・早期治療ができれば予後も良いとされています。
一方、子宮頸癌は進行することで治療の難易度が増していく癌でもあり、どのような進行度にあっても治療できる放射線治療との相性が良いことも特徴です。
一般的な子宮頸癌の放射線治療では、体の外側から放射線を照射する方法と、膣内に専用チューブを挿入して体内から放射線を照射する方法の、大きく2つのケースがあります。後者の方法では直接に子宮内部へ放射線を照射できるため、より治療効果を期待できますが、膣内に器具を挿入しなければならないといったデメリットもあります。また、準備に時間がかかるので、体外からの照射よりも1回の治療時間が長くなることもポイントです。
子宮頸癌における放射線治療では、大きく3つの目的が考えられます。
手術が難しい子宮頸癌であっても、放射線治療と抗がん剤を併用することで根治を目指すことが可能です。ただし、放射線治療による根治治療は長い期間がかかるとされており、治療期間を短縮できるトモセラピーは効果的といえるでしょう。
癌の進行を抑えながら、抗がん剤治療による治療をサポートするために、放射線治療が選択されることもあります。通常、外科手術が難しい場合は薬物療法による治療が選択されますが、副作用リスクや患者の体調などを考慮すると抗がん剤による治療にも限界があり、放射線治療を適切に組み合わせながら治療を進めることが大切です。
早期発見によって外科手術を行えたとしても、微細な癌細胞を完全に除去できなければ子宮頸癌が再発するリスクが高まります。そのため、子宮頸癌では術後に再発予防を目的として放射線治療を行うことも珍しくありません。
トモセラピーでは、CTのように体の周囲360度から癌細胞へピンポイントで放射線を照射することが可能です。また、トモセラピーは放射線照射の精度が高く、近接の臓器や健常細胞に対する放射線の被ばく量を抑えながら目的の癌細胞を攻撃できるため、周囲に卵巣など大切な臓器のある子宮に対する放射線治療としても魅力的といえるでしょう。
加えて、トモセラピーでは膣や子宮へ専用チューブを挿入する必要がありません。そのため、チューブを膣内へ挿入する際の痛みや不快感が生じず、治療時間も短く済みます。
放射線強度を自在に調整できて、同時に複数の部位へ照射することが可能なので、全身の各所へ転移しているケースにも対応できることも見逃せません。
トモセラピーによって必要なポイントへ必要な量の放射線を照射できるため、不必要な負担を患者へかけることなく、治療効果を追求しながら副作用のリスクを軽減することが可能です。
複数の部位へ強弱をつけながら放射線照射を行えるトモセラピーでは、癌細胞が転移している場合もまとめて治療することができます。従来の放射線治療と比較して、一度に対処できる部位が増えるため、総合的な治療期間を短縮しやすいこともメリットです。
トモセラピーは早期発見した子宮頸癌から、進行性の子宮頸癌、さらに術後の再発予防まで、幅広いケースに対応することができます。個々の状態や体質に合った治療のプランニングも行いやすく、治療計画の選択肢が広がることは魅力です。
従来の放射線治療と比較すると、副作用リスクが低いとされているトモセラピーですが、それでも患者によって副作用が生じる可能性はあります。子宮頸癌の治療では、全身の倦怠感や皮膚炎といった副作用の他にも、下痢や腹痛などの副作用リスクがあります。
トモセラピーを行うには、IMRT(強度変調放射線治療)の専用機が必要です。そのため、トモセラピーを実施できる医療施設が限られている点はデメリットといえるでしょう。