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がんの薬剤耐性はなぜ起こる?

癌の治療では分子標的薬や抗がん剤が大きな役割を果たしています。特定の遺伝子変異を狙い撃ちできる分子標的薬の登場で、治療効果は大幅に向上しました。

一方、治療を続けるうちに薬が効かなくなる「薬剤耐性」は依然として深刻な課題です。耐性の仕組みを正しく知り、克服に向けた研究の現状を把握することは、主治医との対話や治療方針の検討に役立ちます。

薬剤耐性とは──原発性耐性と獲得耐性の違い

薬剤耐性とは、がん細胞が治療薬の効果を回避し、同じ薬を使っても効果が得られなくなる現象です。大きく「原発性耐性(一次耐性)」と「獲得耐性(二次耐性)」の2種類に分かれます。

原発性耐性は、がん細胞がもともと薬に反応しない状態を指します。遺伝子の特性上、投与の開始時点から効果が見込めません。獲得耐性は、当初は薬の効果があったにもかかわらず、治療を続ける過程でがん細胞が変化し、薬への抵抗力を身につけてしまう状態です。

分子標的薬の普及で癌の治療成績は改善しました。しかし獲得耐性の出現により、投与から半年ほどで効果が薄れる事例も報告されています。薬剤耐性の仕組みを把握することが、次の治療選択を考える出発点となります。

がん細胞が薬から逃げ延びる「ズルい仕組み」

がん細胞は生き残るために、さまざまな方法で薬の攻撃をかわします。代表的な2つの仕組みを紹介します。

攻撃をかわす迂回路を作る仕組み

がん細胞は、増殖するために「増えろ!」という指令を伝えるための「道路(シグナル経路)」を持っています。分子標的薬はこの道路を封鎖して、増殖を止めようとします。

しかし、がん細胞は非常にしぶとく、メイン道路が通れないなら別の脇道を見つけて、再び増殖の指令を出そうとするのです。また、攻撃の的そのものの形を変えて、薬が当たらないようにしてしまう「変装」のようなことも行います。

親玉への変化による仕組み

がん細胞の中には、いわば「親玉」のような存在であるがん幹細胞がいます。この親玉は非常にタフで、普通の薬がなかなか効きません。

また、がん細胞は自分自身の性質を変える「EMT(上皮間葉転換)」という能力を持っています。薬が効きにくい形に姿を変えてやり過ごし、嵐が去った後に再び増殖を始めるのです。このように、一つの腫瘍の中に「いろいろなタイプのがん細胞」が混ざっていることが、治療を難しくしています。

効かなくなった時のための次の一手

現在、薬が効かなくなる問題を解決するために、世界中で研究が進んでいます。

例えば、複数の薬を組み合わせる「併用療法」や「個別化医療」も一般的になりつつあります。自身の免疫力を利用して攻撃する「免疫チェックポイント阻害薬」や、患者さん一人ひとりの遺伝子を調べて相性の良い薬を選ぶ「個別化医療」も一般的になりつつあります。

注目される新しい味方「ZIC5」の研究

最近の研究では、「ZIC5」という特定の物質が、がんの耐性に深く関わっていることが分かってきました。このZIC5は、正常な細胞にはほとんど存在せず、がん細胞が薬への耐性を持つ時に現れる特徴があります。

ZIC5を抑え込むことで、これまで効かなかった薬が再び劇的に効くようになったという報告もあります。正常な組織への影響が少ないと考えられているため、未来の治療薬として大きな期待が寄せられています。

参照元:公益社団法人日本生化学会(https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2019.910482/data/index.html

まとめ

薬が効かなくなる「薬剤耐性」はがん治療の大きな壁ですが、その正体は少しずつ解明されています。がん細胞が「逃げ道」を作ったり「姿を変えたり」する仕組みが分かってきたことで、それを先回りして防ぐ治療法も増えています。

もし治療中に薬の効果が落ちてきたとしても、それは決して「終わり」ではありません。新しい薬や治療の組み合わせなど、次の選択肢が次々と生まれています。今の不安や疑問は遠慮なく主治医に相談し、納得のいく治療を一緒に見つけていきましょう。