癌の再発と上手に付き合うためのサイト » 癌の再発とは » 休眠がん細胞とは?

公開日: |更新日:

休眠がん細胞とは?

休眠がん細胞とは、治療後にがん細胞が活動を停止した、または非常にゆっくりとしか増殖しない状態のものです。

ここでは、休眠がん細胞とはどのようなものかまとめ、目覚める仕組みとリスク、現在行われている研究内容についてご紹介します。

休眠がん細胞とは何か?

休眠がん細胞とは、治療後にがん細胞が活動を停止した、または非常にゆっくりとしか増殖しない状態のものであり、体内に潜伏している細胞を指します。

この細胞は、発病初期に体の他の部位に転移し、その後、眠った状態(休眠状態)に入るとされる非常に厄介な存在とされています。

休眠細胞は、抗がん剤治療終了まで生き抜く可能性があり、再発につながる可能性があります。しかし、休眠状態に入る理由などは明らかにされていない状況です。

乳がんは、日本人女性のがん罹患数が多いがんの1つとされています。標準治療の確立が進んでおり、生存率の高い疾患ですが、手術後10年・20年と長い期間が経ってから再発・転移をしてしまうケースが少なくないのが特徴であり、患者さんにとって不安の1つです。

このような長い期間を経ての再発や転移は、がん細胞の発生の根源でもある、がん幹細胞が骨髄へと移動し、増殖せずに、休眠状態に入り、再び覚醒すると考えられています。

※参照元: Science Portal科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」|乳がんのかくも長き休眠の仕組み解明

休眠がん細胞が目覚める仕組みとリスク

新型コロナウィルスやインフルエンザなどの感染症にかかると、休眠がん細胞が覚醒し、がん再発につながる可能性があるとされています。 2025年7月30日に学術誌「ネイチャー」に、以下の内容が掲載されました。

インフルエンザや新型コロナウイルスなどの呼吸器ウイルス感染は、がん生存者の休眠がん細胞を再活性化し、転移の進行を促す可能性がある」

上記の論文は、米コロラド大学がんセンターに在籍するジェームズ・デグレゴリ博士のチームが行った研究結果です。

博士の研究チームでは、マウスを使用した実験で、インフルエンザや新型コロナウイルスなどに感染すると、肺に見られる休眠がん細胞を覚醒させる可能性があることを報告。休眠がん細胞は、ウイルス感染に伴う炎症環境を用いることにより再活性化し、増殖してしまうとされています。

今回発表された論文は、マウスを用いて行われた研究ですが、人においても、がん患者が登録されているデータベースの分析で、新型コロナウイルス感染とがん関連死には有意な関連があると判明しています。

※参照元: まるこハート内科クリニック|インフルエンザや新型コロナウイルスが「休眠がん細胞」を再活性化し転移を促進

休眠がん細胞に関する研究

現在、休眠がん細胞に関する研究では、「休眠状態を維持して再発を防ぐ方法」「休眠細胞を見つけ出して排除する方法」といった方針で研究されている状況です。ここでは、実際の研究状況について解説します。

STING作用薬で転移防止を目指す

STING経路の活性を促す薬剤は、進行がんの治療薬として臨床試験にて評価されています。研究者らは、STING作用薬を用いてマウスの休眠細胞で検証を行いました。

Massagué博士が在籍する研究チームは、STINGシグナル伝達は、休眠状態のマウスがん細胞の悪性転移性腫瘍への進行を抑えられることを発見しました。

この研究において、STING作用薬を投与したマウスは、未投与のマウスと比較して、転移腫瘍が少なかったという結果が出ています。

上記結果に対し、Massagué博士は「転移が生じるまでの時間が延長した」と話しています。この研究をもとに、Wicha医師のチームは、MSA-2というSTING作用薬により、休眠マウスがん細胞がナチュラルキラー細胞による攻撃を受けやすくなったと示しています。

Steeg博士は、STING経路に関する研究結果は期待できるものであると語っています。

※参照元: 海外がん医療情報リファレンス|休眠がん細胞にSTING作用薬で転移防止を目指す

アミノレブリン酸を用いた休眠がん細胞を標的とする光線力学療法

5-アミノレブリン酸(ALA)は、生体内で生成されるアミノ酸の一種とされ、ポルフィリンやヘムの前駆体でもあります。がんと診断されている方に、ALAを経口投与すると、腫瘍特異的なプロトポルフィリンIX(PpIX)の蓄積が確認できるのが特徴です。

ポルフィリンが蛍光物質であること、また可視光照射下において活性酸素種を発生させることを用いて、がんの光線力学診断(ALA-PDD)や光線力学療法(ALA-PDT)への応用が行なわれている状況です。

休眠がん細胞は、腫瘍内の微小環境などによる影響で、細胞増殖が抑制されたがん細胞とされています。周囲の環境の変化によって再増殖するため、化学療法や放射線療法などの治療に耐性があるため、がん再発と密接な関係性があるとされています。

この研究では、ヒト前立腺がん由来細胞株PC-3を使用して、細胞密度に焦点を当てたin vitroにおける休眠がん細胞モデルを構築。さらに、休眠がん細胞モデルにおけるALA添加後のPpIX蓄積やPDT感受性の評価を実施し、休眠がん細胞のALA-PDTに対する感受性が高いことも示唆しています。

また、休眠がん細胞モデルに対しマイクロアレイ解析を実施することにより、休眠状態への移行に伴い脂質代謝が亢進することを明らかにしています。Acyl-CoA synthetase(ACSs)の抑制剤(triacsin-C)を添加すると、PpIX蓄積が減少し、ALA-PDTに対する感受性は低下。

これらのことから、休眠状態の移行に伴うALA-PDTの殺細胞効果の亢進は、脂質代謝の亢進と相関関係があることが明らかになっています。

※参照元:J-STAGEトップ/日本レーザー医学会誌/43 巻 (2022-2023) 4 号/書誌

再発がんへの研究が進んでいる

休眠がん細胞とは、治療後にがん細胞が活動を停止した、または非常にゆっくりとしか増殖しない状態を指します。休眠中のがん細胞には従来の化学療法が効きにくいことが分かっていることから、がんの治療を受けている方にとっては不安な要素とも言えます。

休眠がん細胞の研究は現在も進められており、休眠状態を維持する、もしくは休眠から覚醒させてから攻撃するといった、新しい治療法への応用が期待されている状況です。休眠がん細胞や転移・再発のことで心配な方は、主治医へ相談してみるのがよいでしょう。